猫の乳腺がんについて

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。

コロナウイルスの影響で各学会はほとんどがオンライン開催となっています。
皮膚科学会、WJVF第11回大会、第22回日本獣医がん学会、JBVP-日本臨床獣医学フォーラム・・と、
オンラインの学会や勉強会に参加しています。
学会会場で先生方と直接会ってお話ししたり、ディスカッションができない寂しさはありますが、
いつでもどこでも何度でも視聴することができるメリットはとても魅力的です。

特に先日まで参加していたJBVPは規模が大きく、アーカイブ視聴ができるため、全ての講義を受けることができます。
その数はとても多いですが、いつもは同時刻に行われている講義を受けることができないため、
ここぞとばかりにほぼ全ての講義を聞きました。大変でしたし、頭がややパンク気味です。
聞くだけで満足してしまっては意味がないですので、今回学んだことをアウトプットできるよう復習が大事だと思っています。

今回視聴した講義の中で特に面白かったものの一つに、海外の先生のがん治療のお話がありました。
そこでは人の医療と同じ様に、目の前のがん患者、一つ一つのがんに対する分子生物学的特徴を調べ、
どこに遺伝子変異があるのか、どの分子標的薬が効果を示すのかを調べ治療に応用していました。
今までは一人の患者に効くだけの薬は統計学的に有用ではないとされてきましたが、
今後は一人一人に合ったがん治療を考える時代になってきたのだと感じました。
日本でもそういった検査や薬が臨床現場で使えるようになる日が待ち遠しいです。

本日は論文の話というわけではないのですが、猫の乳癌のお話をしたいと思います。

猫の悪性腫瘍の中で最も多いのが乳癌

病気で亡くなる猫の1/3は悪性腫瘍が原因と言われています。
さらにその悪性腫瘍の中で最も多いのが乳癌です。
乳癌はほとんどが雌の猫に起こります。
猫の乳腺にできるしこりの約80%が「悪性」というデータが出ています。

2cm。ここがポイント

猫の乳癌のステージ分類をみてみましょう。

ステージ 大きさ(T) リンパ節転移(N) 遠隔転移(M)
<2cm なし なし
2-3cm なし なし
3cm<
全て
なし
あり
なし
全て あり

ここでもわかる様にしこりのサイズが2cm未満で転移所見がなければステージがⅠなんです。
ステージⅠとⅢでは生存期間が全く異なります。
(生存期間中央値:ステージⅠでは4-5年、Ⅲでは6ヶ月といった報告も)
たった1cmほどの違いですが、大きな大きな違いです!

早期の避妊手術が乳癌の予防につながる

ある報告によると乳癌はホルモンバランスがとても関係していることが分かりました。
表は避妊手術の実施する年齢と、乳癌の発生を抑える割合についてです。

避妊手術の実施する年齢 乳癌の発生抑制率
6ヶ月齢未満 91%
7-12ヶ月 86%
13-24ヶ月 11%
24ヶ月以降 効果なし

つまり早期の避妊手術で将来の乳癌を予防できるということになります!

治療について

基本的に猫の乳癌の治療は外科手術になります。
しかも「しこりだけ」を摘出する手術ではなく、乳腺を片側もしくは両側すべて摘出する大きな手術です。
痛くてかわいそうに感じる方も多いとは思いますが、これが有効な治療法であることがわかっています。
手術をしなかった場合や、小さく手術をした場合に、今後起こりうる苦痛を考えると、
可能であれば、乳腺全摘出術を実施することが推奨されます。
また手術の結果によっては術後の化学療法が必要になる場合もあります。

早期発見・早期治療で予後が変わる

猫の乳癌は早期発見で予後を変えることができるがんです。
そのためには普段の飼い主様のチェックと、治療に対する正しい知識が必要です。

〜10月22日は「キャットリボンの日」です。〜
当院も応援していますキャットリボン運動のオンラインイベントの開催のお知らせです!
猫の乳癌を減らすため、キャットリボン運動が行われています。
今回は飼い主様向けの無料のイベントです。
猫の乳癌は早期発見をすることで根治を目指せる場合もあります。
一方で発見が遅れてしまうと、命を落としてしまうことがとても多い病気です。
みんなで勉強して、HAPPY・キャットライフを!!(↓画像をクリックすると詳細ページにいきます)

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