健康診断の読み方・考え方

夜のすわ動物病院

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。

4月より診療時間の変更をさせていただきました。
みなさまの温かいお声と、ご協力に心より感謝いたします。
本当にありがとうございます。
今後も当院をよろしくお願いいたします。

横になっている白黒猫

4月、5月はフィラリア予防や狂犬病予防注射など、
動物病院が混み合う時期です。
お時間に余裕をもってご来院ください。
フィラリアに関してはこちらの記事も参考にしてください。

さてそんなフィラリア予防の開始には
フィラリアの抗原検査などが必要になりますが、
その際に一緒に健康診断を受けられる方も少なくありません。
1年に1回、健康診断を受けることは人の医療と同様に
病気の早期発見、早期治療につながります。
今日はそんな健康診断を受けたけど、
よく読み方がわからない・・といった方のために
簡単に健康診断報告書の読み方について
ご説明したいと思います。

健康診断(血液検査)で分かること

当院で行っている健康診断(血液検査)では
おもにCBCと呼ばれる
赤血球や血小板、白血球を調べる検査と、
生化学(19項目)を調べる検査を一緒に行っています。
生化学とは体の蛋白や肝臓、腎臓の値を調べたり、
メタボリックシンドロームなどでおなじみの
高脂血症や糖尿の有無を
調べたりするものになります。

また、若いから病気は少ないし必要ですか?
と聞かれることはよくあります。
個人的にはその子の普段の値が分かることが
利点だと思っています。
例えば、参考基準範囲が2.6-4.0のアルブミン値が
2年前は3.8、去年は3.7だった子が、
今年は2.6だったとします。
全て基準範囲内で、正常値となりますが、
これは大丈夫でしょうか?
この場合、
何かしら病気のサインであることは多いと感じます。
さらに若齢の子は病気がないことがほとんどですが、
ゼロではありません。
まさかうちの子に限って・・と後悔はしたくありません。

ここからは簡単にそれぞれの項目の読み方について
お話しします。
あくまでも簡単に書いてますので、
それだけではないこと、
検査は総合的に判断することがあることを
ご理解ください。
ご不明な点などは主治医の先生にご相談してください。

CBC(血球計算)とは?

CBCとはComplete Blood Countの略で、
血液中の赤血球や血小板、白血球を調べます。
赤血球が少ない、つまり貧血がないか、
逆に多い(多血症)ことはないか、
白血球や血小板が増えたり、減ったりしてないか、
どこかに感染や炎症、ストレスがないかといったことを
調べたりします。

総蛋白(TP)、アルブミン(ALB)

脱水の状態や、消化管、腎臓からの蛋白の喪失などを
調べます。

T-Bil、AST、ALT、ALP、γ-GTP

これらは主に肝臓の酵素などで、肝障害や胆嚢疾患などを
調べます。
また特にALPは比較的よく値が高くなる酵素ですが、
肝臓以外にも内分泌(ホルモン)の病気や
様々な疾患で高値を示します。

尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cre)

これらは腎疾患や循環状態などが反映される項目です。
BUNは高タンパク食の摂取などでも高値を示します。
腎臓のマーカーとして知られていますが、
腎臓の75%近くが機能しなくならないと
上がってこないことが知られており、
近年では腎臓の早期発見には追加の項目が
必要となります(オプション検査)。

T-Cho、中性脂肪(TG)

総コレステロールや中性脂肪は内分泌疾患や
脂質代謝異常などで
異常値を認めることがあります。
それ以外にも食事の影響や犬種特異性などもあり
総合的に判断する必要があります。
いわゆるメタボリックシンドロームの
早期発見にもつながる検査です。

カルシウム、無機リン

カルシウムは腫瘍性疾患、腎疾患などで
高値を示すことがあります。
またリンは通常カルシウムと
反比例に動くことが知られています。
体のバランスを調べることができます。

血糖値

糖尿病や低血糖などを調べる項目です。
糖尿病も多いですが、低血糖は腫瘍などでも
引き起こされるため、
とても大切な項目となります。

Na、K、Cl

いわゆる電解質とよばれる検査です。
体内の水分のバランスや腎臓、消化管の状態を
間接的に把握できます。
血球を分離していない検体や溶血した検体などで
外注検査を行なった場合は
カリウム(K)が高値を示すこともあります。

オプション項目

オプションの検査として、
甲状腺ホルモンや、糖尿病のモニタリングの検査、
腎臓のマーカーや炎症マーカー、
ワクチン抗体価など、様々な項目があります。
これらは最初からは検査項目に含まれていませんので、
ご相談ください。

異常値が出たから病気でしょうか??

異常値が出た項目や、値にもよります。
異常値だからといってすぐに治療は必要ない場合も
少なくありません。
再検査や他の検査と組み合わせて
総合的に判断することが多いです。
詳しくは主治医の先生とご相談ください。

健康診断(血液検査)で分からないこと

毎年健康診断(血液検査)を受けていたにも関わらず、
がんが見つかって、かなり進行していた。
といったことはしばしばあります。
なぜ、毎年しっかり血液検査を受けていたにも関わらず
がんの早期発見ができなかったのでしょうか?

多くの方がフィラリア検査の際にされる健康診断は
上記の血液検査になります。
血液検査は幅広く身体の状態を知ることができる
素晴らしい検査です。
一方で、人の医療のような腫瘍マーカーなどは
動物ではほとんどないのが現状です。
例えば、
・脾臓や膀胱、肺に腫瘍がある
・膀胱結石がある
・関節炎がある
・皮膚や乳腺にできものがある
などは、一般的に血液検査は異常を示さないことが
ほとんどです。
このような疾患を早期発見するためには
画像検査(X線検査や超音波検査)や
尿検査などが必要になってきます。

血液検査はとても素晴らしい検査です。
ですが、どのような検査でも
得意な部分とそうでない部分があることは
理解しておく必要があります。
画像検査も定期的に組み入れることで、
大切な家族の健康を維持することができます。

スキンシップは最高の健康診断!

最後になりますが、動物病院で行う検査も
とても大切だと思いますが、
普段お家で愛犬、愛猫をしっかり見て、触ること、
小さな変化に気付いてあげること、
これが何よりも大切な健康チェックだと思います。
毎日見ているご家族だからこそ気づける小さな変化は
確かにあります。

病気で苦しむ動物を減らしたいです。
そしてご家族の不安を少しでも減らせるようにしたいです。
不安なこと、ご不明なことがあればお気軽にご相談ください。
今日は健康診断のお話でした。

ドアップの猫

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