みなさん、こんにちは。
院長の諏訪です。
6月になりました。
もう気温が30度を超える日があって
とても暑い日が多いですね。
早めの熱中症対策が必要です!
先日、5月17日-18日は休診をいただき、
東京で行われた小動物臨床血液研究会と日本獣医輸血研究会の共同開催大会に
参加させていただきました。
血液学だけを1日みっちり勉強できるのはこの会だけで、
普段聞けないような話が聞けたり、ディスカッションができたり、
日本中の血液の先生が集まって意見交換ができる貴重な場です。
僕は今回は顕微鏡ディスカッションでアドバイザーの仕事もさせていただきました。
会場で顕微鏡を使ってスライドを見て、
所見や考えを話すといったことをしました。
その場でぱっと考えをまとめてコメントを出すのは
とても難しいことですが、非常にいい経験をさせていただきました。
今後の診療に活かせるよう精進いたします。
当院は獣医師が僕だけで、学会参加で休診をいただく日が多いですが、
ご理解とご協力、いつもありがとうございます。
はじめに
肛門周囲腺腫(Perianal Gland Tumor)は、
犬において比較的多く見られる腫瘍の一つです。
この腫瘍は主に「未去勢の雄犬」で発生することが多く、
性ホルモンとの関連が深いとされています。
多くの場合は良性ですが、まれに悪性の腫瘍も存在します。
肛門周囲腺腫とは
肛門周囲腺腫は、肛門周囲の皮脂腺に由来する腫瘍であり
性ホルモンに依存して発生することが知られています。
以下がこの腫瘍の主な特徴です。
- 良性が多い:多くのケースで良性ですが、放置すると悪化する可能性があります。
- 雄犬に多い:特に未去勢の高齢犬での発生率が高いです。
- 性ホルモン依存性:去勢を行うことで発生リスクを低下させることができます。
症状
肛門周囲腺腫の症状は、腫瘍の大きさや進行状況によって異なります。
以下は主な症状です。
- 肛門周囲のしこり:肛門付近に小さなしこりや腫瘤が触れることがあります。
- 腫瘍の増大:時間とともに腫瘍が大きくなることがあります。
- 潰瘍化:進行すると皮膚がただれたり出血することがあります。
- 排便困難:腫瘍が肛門を圧迫することで、排便が難しくなる場合があります。
- 痒みや痛み:腫瘍の部位を犬が舐めたり引っ掻いたりする行動が見られることがあります。
診断のための検査
肛門周囲腺腫を診断するためには、以下のような検査が行われます。
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身体検査と触診 肛門周囲の腫瘤の大きさや形状、硬さを確認します。
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細胞診検査 腫瘍から細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
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病理組織検査 腫瘍の一部を切除し、詳細な病理学的分析を行います。
悪性度を評価するために重要です。 -
画像診断
⚪︎X線検査:転移の有無の評価を行います。
⚪︎超音波検査:腫瘍の広がりを確認するために使用されます。 -
血液検査 全身状態を評価し、麻酔や手術の適応を確認します。
治療法
肛門周囲腺腫の治療は、腫瘍の大きさや性質、犬の全身状態に応じて選択されます。
以下は主な治療法です。
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外科的切除
⚪︎腫瘍を完全に切除することが最も一般的な治療法です。
⚪︎良性の場合、切除で治癒することが多いです。 -
去勢手術
⚪︎性ホルモン依存性の腫瘍であるため、
去勢手術を行うことで再発リスクを大幅に減少させることができます。 -
放射線治療
⚪︎悪性腫瘍や切除が難しい場合に使用されることがあります。 -
化学療法
⚪︎転移がある場合や悪性度が高い場合に行われることがあります。 -
支持療法
⚪︎痛みや炎症を管理するために、鎮痛薬や抗炎症薬が使用されます。
予後
早期に切除と去勢を行うことで再発のリスクを大幅に減少させることができます。
一方で、悪性腫瘍の場合や転移が進行している場合は、
予後が厳しくなることがあります。
おわりに
肛門周囲腺腫は比較的よく見られる腫瘍です。
特に未去勢の雄犬では発生リスクが高いため、
定期的な健康チェックを行うことをお勧めします。
小さい状態から「様子を見た」結果、
大きくなって出血がひどくなる状態によく遭遇します。
できるだけ早期発見、早期治療が好ましいと感じます。
肛門周囲にできものや異常を感じた際は、
早めに動物病院へご相談ください。