みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
去年あたりから腫瘍疾患や血液疾患の患者様がとても多くなりました。
かかりつけの動物病院からのご紹介の方やセカンドオピニオンで来られる方など
さまざまです。来院される際は是非、今までの検査結果や治療経過がわかるもの、
現在服用中のお薬などを一緒に持って来ていただけると診察がスムーズになります。
また、このような診察はとても時間がかかります。
当院には獣医師が僕しかおらず、しかも予約制でもないため、
どうしても待ち時間が長くなってしまいます。
大変ご迷惑をおかけいたします。申し訳ありません。
いつもご理解、ご協力、温かいお言葉、ありがとうございます。
初診の方の受付時間は午前は9:00-10:30、午後は16:00-17:30となっております。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
今日は猫の肥満細胞腫についてです。
はじめに
肥満細胞腫(Mast Cell Tumor, MCT)は、猫の皮膚や内臓に発生する比較的一般的な腫瘍の一つです。
肥満細胞は免疫系の一部として働く細胞ですが、「異常増殖」することで腫瘍を形成します。
猫の肥満細胞腫は、皮膚型と内臓型の2種類に分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。
肥満細胞腫とは
肥満細胞腫は、体内でヒスタミンや炎症性物質を放出する肥満細胞が腫瘍化したものです。
猫では比較的発生頻度が高く、皮膚型と内臓型の2種類に分類されます。
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皮膚型
主に頭部、首、四肢などの皮膚に発生します。
多くは良性の挙動をとり、進行が緩やかと言われています。 -
内臓型
脾臓や消化管に発生することが多いです。
進行が速く、転移のリスクが高いと言われています。
症状
肥満細胞腫の症状は腫瘍の発生部位によって異なります。
- 皮膚型の主な症状
- 皮膚にできる小さなしこりや腫瘤
- しこりが変化し、潰瘍や炎症を伴うことがある
- 痒みや赤みが見られることがある
- 内臓型の主な症状
- 食欲不振や体重減少
- 嘔吐や下痢などの消化器症状
- 脾臓が腫れることによる腹部の膨満感
- 貧血や衰弱
などが主な症状と言われています。
診断のための検査
肥満細胞腫を診断するためには、以下のような検査が行われます。
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視診および触診
・皮膚型ではしこりの大きさや数を確認します。
・内臓型では腹部の膨満感や異常を確認します。 -
細胞診検査(FNA: Fine Needle Aspiration)
・針を用いて腫瘍細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
・肥満細胞特有の顆粒などを確認します。 -
病理組織検査
・腫瘍の組織を採取し、悪性度の評価を行います。 -
血液検査
・貧血の有無や全身状態を評価します。 -
画像診断(X線・超音波検査)
・内臓型の場合、脾臓や肝臓の異常を確認します。 -
骨髄検査
・血液系の影響、骨髄浸潤を調べるために行われることがあります。
治療法
肥満細胞腫の治療は、腫瘍の種類や進行度によって異なります。
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外科的切除
「皮膚型」→ 腫瘍を広範囲に切除することで完治が可能な場合が多いです。
「内臓型」→脾臓の摘出(脾臓摘出術)が治療の選択肢となります。 -
化学療法
転移がある場合や外科的切除が困難な場合に使用されます。
プレドニゾロンやビンブラスチンなどの薬剤が用いられます。
抗がん剤ではありませんが、近年では分子標的薬も選択肢に含まれます。 -
放射線治療
手術後に残存腫瘍がある場合や、切除が難しい部位に使用されます。 -
支持療法
ヒスタミン放出による副作用(胃潰瘍など)を防ぐために、
抗ヒスタミン薬(ファモチジンなど)を投与します。
痛みや炎症を緩和するためのステロイド療法も使用されます。
予後
肥満細胞腫の予後は、腫瘍の種類や進行度によって異なります。
・皮膚型の多くは良性であり、完全切除できれば良好な予後が期待できます。
・内臓型は進行が速く、転移のリスクが高いため、早期診断と治療が重要です。
おわりに
猫の肥満細胞腫は、「皮膚型」と「内臓型」で性質が異なるため早期の診断と適切な治療が重要です。
愛猫の皮膚にしこりを見つけた場合や、食欲不振などの症状が見られた場合には
早めに動物病院へご相談ください。
先日、飛行雲が3つ続けてできていました。
なにかいいことあるかなぁと思いましたが、
いつも通りでした。いつも通りがいいですね!