みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
暑い日が続きますね。少し動いたらすぐにバテてしまいます。
7月5-6日は東京で行われた日本獣医がん学会に参加してきました。
東京もとても暑く、慣れないスーツで汗だくになりました。
今回は講演のお仕事もいただき、
「猫の消化管型リンパ腫」についてお話しさせていただきました。
メインシンポジウムでは心臓腫瘍に関して、
それ以外にも病理のシンポジウムでは肥満細胞腫のリンパ節の取り扱いについて、
とても勉強になる話ばかりでした。
よりよい医療の提供ができるよう、日々精進いたします。
7月20日〜21日は終日休診となります。
遠方から来院される方も多いです。ご注意ください。
また、診療日の受付時間は9:00-11:30 16:00-18:30、
初診の方の受付時間は9:00-10:30 16:00-17:30となっております。
ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
本日はあまり遭遇する機会は多くありませんが、
前回の犬に続き、猫の血管肉腫についてです。
はじめに
血管肉腫は、猫では比較的まれな悪性腫瘍ですが、
その進行は速く、転移しやすいため、早期診断と適切な治療が重要です。
血管内皮細胞から発生し、主に皮膚、脾臓、肝臓、心臓などに見られることが多い腫瘍です。
血管肉腫とは
血管肉腫は、血管を構成する「内皮細胞が異常増殖」することで発生する悪性腫瘍です。
犬では比較的一般的な腫瘍ですが、猫では発生率が低いとされています。
- 主な発生部位
- 皮膚・皮下組織:四肢や耳、顔面などに発生することが多い。
- 脾臓・肝臓:腹部内臓に発生し、出血のリスクが高い。
- 心臓(右心房):心タンポナーデを引き起こす可能性がある。
症状
血管肉腫の症状は発生部位によって異なります。
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皮膚型
・赤黒いしこりや皮膚の腫瘤
・出血しやすく、傷が治りにくい -
脾臓・肝臓型
・元気消失、食欲不振
・貧血(歯茎の蒼白)
・腹部の膨満や突発的な虚脱 -
心臓型
・呼吸困難、咳
・胸水が溜まり、体調が急激に悪化
診断のための検査
血管肉腫の診断には以下のような検査が行われます。
-
身体検査と触診
皮膚型の場合はしこりの状態を確認
腹部膨満や異常の有無を評価 -
血液検査
貧血や炎症マーカーをチェック
肝酵素の上昇など、内臓の影響を評価 -
画像診断
X線検査:心臓型や肺転移の有無を確認
超音波検査:脾臓や肝臓の腫瘤を評価
CT/MRI:腫瘍の広がりを詳細に確認 -
細胞診・病理組織検査
腫瘍組織の生検により確定診断を行う
治療法
血管肉腫の治療は、発生部位や進行度によって異なります。
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外科的切除
皮膚型:腫瘍が小さい場合は外科的切除が第一選択。
脾臓型:脾臓摘出手術が行われることが多い。
心臓型:手術が難しく、他の治療が必要な場合が多い。 -
化学療法
転移リスクを抑えるために実施。
ドキソルビシンなどが使用されます。 -
支持療法
貧血対策のための輸血。
痛みや炎症を抑える鎮痛薬や抗炎症薬。
心臓型では利尿剤や強心薬を使用することもあります。
予後
血管肉腫は非常に進行が速く、予後は厳しいとされています。
皮膚型:早期発見・完全切除で予後は比較的良好な経過を示すこともあります。
脾臓型・肝臓型:外科手術後でも生存期間は数ヶ月程度。
心臓型:診断時にすでに進行していることが多く、予後は数週間から数ヶ月程度。
おわりに
猫の血管肉腫は稀な疾患ですが、進行が速いため早期発見・診断が重要です。
愛猫の皮膚に異常なしこりがある場合や、
元気がなく食欲不振が続く場合は、早めにご相談ください。