みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
8月10日、11日は臨時休診となります。
ご迷惑をおかけいたします。
いつもご理解、ご協力のほど、ありがとうございます。
はじめに
悪性黒色腫(メラノーマ、Melanoma)は、犬に発生する腫瘍の中でも
特に注意が必要な悪性腫瘍の一つです。
皮膚、口腔内、爪床、眼などの色素細胞(メラノサイト)に由来し、
特に「口腔内や爪床」に発生するメラノーマは進行が速く、転移もしやすい腫瘍です。
悪性黒色腫とは
悪性黒色腫は、メラニンを産生する色素細胞ががん化した悪性腫瘍です。
以下のような部位に発生することが多く、それぞれに特徴があります。
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口腔内メラノーマ:歯肉、舌、口蓋に発生しやすい。進行が速く、肺やリンパ節への転移が一般的。
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皮膚メラノーマ:皮膚表面にしこりとして現れる。良性の場合もありますが、悪性の場合は要注意。
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爪床メラノーマ:爪の付け根に発生し、炎症や出血を伴うことが多い。
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眼内メラノーマ:虹彩や眼球内に発生し、視覚障害を引き起こすことがあります。
症状
症状は発生部位によって異なりますが、以下のような兆候が見られることがあります。
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口腔内メラノーマ
・よだれが増える
・口臭(腐敗臭)
・食べづらそうにする、食欲低下
・出血や腫瘍の塊が見える -
皮膚メラノーマ
・黒っぽいまたはピンク色のしこり(色素沈着がないことも)
・かさぶたや潰瘍を伴う -
爪床メラノーマ
・爪の根元が腫れる、出血する
・歩き方の異常、痛がる -
眼内メラノーマ
・目の色の変化、充血
・視力低下、眼圧上昇による緑内障の兆候
診断のための検査
悪性黒色腫を診断するために以下の検査が行われます。
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視診・触診
⚪︎腫瘍の大きさや形、出血の有無を確認します。 -
細胞診検査
⚪︎腫瘍から細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
色素の有無が診断の鍵になる場合もあります。 -
病理組織検査
⚪︎腫瘍の一部または全部を外科的に切除し、確定診断を行います。 -
画像診断
⚪︎X線やCT、超音波検査で肺やリンパ節への転移の有無を評価します。 -
血液検査
⚪︎全身状態を評価し、手術や麻酔の適応を判断します。
治療法
悪性黒色腫の治療は、発生部位や腫瘍の大きさ、転移の有無によって異なります。
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外科的切除
完全切除が可能であれば最も効果的な治療法です。
「口腔内メラノーマ」では広範囲の切除が必要なことがあります。 -
放射線治療
手術が難しい場合や残存腫瘍がある場合に有効な治療法です。
痛みの緩和や腫瘍縮小を目的として行われます。 -
化学療法
メラノーマに対する効果は限定的とされますが、補助的に使われることがあります。 -
免疫療法
メラノーマワクチン(Canine Melanoma Vaccine)などの新しい治療法が研究され、
特定の症例で使用されています。 -
支持療法
痛みの管理や栄養補助、抗生物質の使用し、生活の質を維持するための治療が行われます。
予後
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口腔内メラノーマ:転移率が非常に高く、予後は一般的に不良。
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皮膚メラノーマ:良性であれば予後良好、悪性であれば転移リスクがあります。
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爪床メラノーマ・眼内メラノーマ:進行が速く、予後は慎重に評価する必要があります。
おわりに
悪性黒色腫は発生部位によって治療方針や予後が大きく異なります。
愛犬の口の中や皮膚、爪、目などを日頃から観察し
異常を見つけた場合には早めの受診をお勧めします。