みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
少し朝晩は涼しくなってきましたが、まだまだ暑い日が続きます。
体調管理には十分注意しましょうね。
サボテンがどんどん大きくなっていきます。。
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お時間に余裕を持ってご来院ください。
ご理解、ご協力、いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
さて、本日は比較的遭遇する頻度の多い犬の移行上皮癌についてです。
はじめに
移行上皮癌 = TCC(Transitional Cell Carcinoma)は、
犬の下部尿路、特に膀胱三角部に発生することが多い悪性腫瘍です。
進行が比較的遅いものの、局所浸潤性が強く、尿道や周囲臓器への広がり、
さらには肺やリンパ節などへの転移も起こる可能性があります。
移行上皮癌とは
移行上皮癌は、尿路の粘膜を構成する「移行上皮細胞」ががん化することで発生する悪性腫瘍です。
特に膀胱の内側、尿道の周辺、時には前立腺や腎盂などにも発生することがあります。
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好発犬種:スコティッシュ・テリア、シェットランド・シープドッグ、ビーグルなど
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発症年齢:中~高齢犬に多く見られます
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性差:雌犬にやや多く見られます
症状
初期は膀胱炎に似た症状が見られるため、見過ごされやすい為注意が必要です。
・頻尿
・血尿
・排尿困難、排尿時のいきみ
・尿の中に血の混ざった小さな塊
・疲れやすい、元気がない(進行時)
診断のための検査
移行上皮癌の診断には以下のような検査が行われます。
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尿検査
・血尿や腫瘍細胞の有無を確認します。 -
画像診断
・超音波検査:膀胱内の腫瘍や肥厚(組織が厚く、大きくなる)などの有無を確認。
・X線検査:膀胱や周囲の骨、肺への転移の確認。
・造影検査(排泄性尿路造影など):腫瘍の広がりを詳細に把握。
・CT検査:外科手術の適応を判断するために使用されることがあります。 -
細胞診・組織検査
・尿道カテーテルや膀胱鏡を用いて細胞や組織を採取。
・確定診断のためには組織病理検査が必要です。 -
BRAF遺伝子検査
尿から特定の遺伝子変異を検出する非侵襲的な検査で、TCC(移行上皮癌)の診断に有用です。
治療法
移行上皮癌の治療は、腫瘍の進行度や全身状態により異なります。
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薬物療法(化学療法・分子標的薬)
抗がん剤(ミトキサントロンなど)
分子標的薬
NSAIDsは抗炎症作用とともに抗腫瘍効果も示す場合があります。 -
外科的切除
膀胱三角部に発生することが多く、完全切除が困難な場合が多いです。
一部の限局した腫瘍に対しては手術が適応となる場合もあります。 -
放射線治療
緩和的な目的で行われることがありますが、一般的には日本ではあまり行われていません。 -
支持療法
排尿障害を緩和するための鎮痛薬や利尿薬など。
尿路感染症の治療や予防も重要です。
予後
移行上皮癌の予後は腫瘍の部位と進行度によって異なりますが、
抗がん剤やNSAIDsなどの治療を併用することで
生存期間が6~12か月に延長されることもあります。
早期発見と継続的な治療により、QOL(生活の質)を維持することが可能です。
おわりに
移行上皮癌は見逃されやすい腫瘍ですが、早期に適切な検査と治療を行うことで、
愛犬の生活の質を保ちながら長く一緒に過ごすことができます。
頻尿や血尿などの症状が見られた場合は、膀胱炎だけでなく腫瘍の可能性も考慮し、
早めに動物病院を受診してください。