みなさん、こんにちは。
院長の諏訪です。
ゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか?
5月17日、18日は学会参加のため、
17日は午前のみ診察、18日は休診となっております。
東京で血液の勉強をしてきます!
ご理解、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
さて本日は猫の繊維肉腫のお話です。
はじめに
線維肉腫(Fibrosarcoma)は、猫において比較的多く見られる悪性腫瘍であり、
皮下組織や筋肉などの結合組織から発生します。
注射やワクチン接種部位に関連する
「注射部位関連肉腫」としても知られています。
この腫瘍は局所浸潤性が高く、再発リスクが非常に高い事が特徴の腫瘍です。
線維肉腫とは
線維肉腫は、結合組織の線維芽細胞が腫瘍化することで発生する悪性腫瘍です。
注射部位関連肉腫としての線維肉腫は、
特にワクチンや注射を受けた部位に発生する可能性があります。
以下が線維肉腫の特徴です。
- 局所侵襲性:腫瘍が周囲の組織に深く浸潤するため、完全切除が難しい場合があります。
- 再発リスク:不完全な切除では再発率が非常に高いです。
- 転移:肺やリンパ節への転移は比較的少ないとされています。
症状
線維肉腫の主な症状は以下の通りです。
- しこりの形成:皮下に硬いしこりが形成されます。
- 腫瘍の増大:時間とともに腫瘍が大きくなります。
- 炎症や潰瘍:進行した場合、腫瘍表面が赤く腫れたり潰瘍が形成されることがあります。
- 痛み:腫瘍が大きくなることで周囲の組織を圧迫し、痛みを伴うことがあります。
- 運動障害:四肢に発生した場合、跛行や動きに制限が見られることがあります。
診断のための検査
線維肉腫を診断するためには、以下の検査が行われます。
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身体検査と触診:腫瘍の大きさや硬さ、周囲組織との癒着状況を確認します。
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細胞診検査: 腫瘍から針で細胞を採取し、顕微鏡で観察します。
ただし、確定診断には不十分な場合があります。 -
病理組織検査: 腫瘍の一部を切除して詳細に分析します。
腫瘍の種類や悪性度を判断するために重要です。 -
画像診断
X線検査:肺への転移の有無を確認します。
超音波検査:腫瘍の内部構造や浸潤範囲を評価します。
CT/MRI検査:腫瘍の浸潤範囲を詳細に確認し、手術計画を立てるために使用されます。 -
血液検査: 全身状態を評価し、麻酔や手術の適応かを確認します。
治療法
線維肉腫の治療は、腫瘍の大きさや進行度、発生部位に応じて異なります。
以下に主な治療法を紹介します。
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外科的切除
⚪︎ 健康な組織もマージンとして確保し、広範囲の切除が治療の中心です。
(不完全な切除は再発リスクが高いため、可能な限り完全な切除を目指し行います) -
放射線治療
⚪︎残存腫瘍細胞を減少させるために使用されます。
⚪︎手術前後に行われることが多いです。 -
化学療法
⚪︎効果は限定的ですが、特定のケースで腫瘍の進行を遅らせる目的で使用されることがあります。 -
支持療法
⚪︎痛みや炎症を管理するため、鎮痛剤や抗炎症薬を使用します。
予防策
注射部位関連肉腫の予防には、以下のような対策が有効とされています。
- ワクチン接種の部位を変更:首ではなく四肢や尾などに接種することで、
万が一腫瘍が出来てしまっても手術で切除が可能になる場合があります。 - 注射回数の最小化:必要最低限のワクチン接種を行い、不要な注射を避ける。
- 定期的な触診:注射などを接種後、その部位にしこりがないかを定期的に確認します。
予後
線維肉腫の予後は、早期発見と完全切除の可否に大きく依存します。
腫瘍が小さい段階で切除できれば再発リスクを低減できますが、
進行している場合や不完全切除の場合、再発率が高くなります。
おわりに
線維肉腫は再発しやすく、早期発見と適切な治療が鍵となる疾患です。
ワクチン接種との関連も考えられる注射部位肉腫は
われわれにとっても悩ましい疾患です。
ですが、ワクチンは病気から身体を守る大切な予防だと思います。
ワクチンは怖いものではありません。
必要以上に接種しない、接種部位を注意する、
早期発見、早期治療を心がけることで愛猫の健康維持を目指したいですね。