歯石除去について

歯石がついている犬の口

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
まだまだ暑い日が続くと思ったら、大雨が降ったりと
天気が不安定ですね。
雨が降ると家庭菜園が喜ぶのでありがたいのですが。
家庭菜園
学会が現地開催になったり、
講師などのお仕事もいただいたりして、
病院の臨時休診が今までより多くなることが予測されます。
みなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、
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歯周病について

さて、今日は歯石除去について簡単にお話ししたいと思います。
4-6月は歯石除去について、院内掲示をしていたこともあり、
麻酔をかけての歯周病治療や歯石除去をする機会がとても多かったです。
また、歯周病は飼い主様も日常生活において、
口臭がしたり、歯が汚れていたりするので、発見しやすい疾患のため
年間を通じても、歯周病治療を行う機会は多いと思います。
犬や猫の歯周病はそれだけ遭遇する機会の多い疾患と言えます。
歯石が付着している犬の歯周病

歯周病は全身疾患!

歯周病は犬や猫、人にも起こる疾患で、
細菌が増殖したり、
歯肉が炎症を起こしたりすることで発症します。
「歯周病は全身疾患」だとよく耳にします。
放っておくと、歯だけではなく、体の色々な部位に病気を
起こしてしまうリスクにつながります。
そのため、歯周病の治療は歯だけではなく、
身体の全身をケアする大事な治療となります。
猫の歯周病

歯周病治療には麻酔処置が必要!

歯周病の治療には「全身麻酔」が必要です。
全身麻酔にはリスクがありますので、
全身麻酔は怖いというイメージを持っていらっしゃる方は
とても多いと思います。
僕も、正直怖い部分はあります。
0%にできないリスクは怖いです。
ですが、限りなくゼロにするために、しっかり術前の検査を行い、
麻酔中のモニタリングを慎重に行っています。
予想だにしない事態に備え、多くの準備をした上で、
歯周病治療に臨んでいます。

また、高齢だから麻酔がかけられない、
心臓が悪いから麻酔がかけられない、
と思われている飼い主様は多くいらっしゃいます。
麻酔がかけられるかどうかは、
年齢や疾患だけで判断することはありません。

無麻酔の歯石除去について

最近はいろんなところで無麻酔での歯石除去を耳にします。
麻酔をかけずに歯石がとれるなら、
全身麻酔のリスクがなく歯石が取れるなんて、
最高だと感じる方も少なくないようです。
僕も、もし無麻酔の歯石除去が安全に適切に行えるのであれば、
麻酔なんてかけたくありません。
ですが、無麻酔の歯石除去には多くの危険があると言われています。
下のX線画像は無麻酔の歯石除去をした後から
食事を食べなくなったとのことで来院されたワンちゃんのものです。
下顎骨折している犬のレントゲンの画像難しいですが、下の顎の骨が折れてしまっている状態です。
もちろん、いつ骨折したかは分かりません。
わかるのは、この状態でこのワンちゃんは痛く辛い思いを
ずっと我慢していたということだけです。

日本小動物歯科研究会のHPには
無麻酔で歯石をとる危険性についてしっかりと記載があります。
こちらをご参考にしてください。

アメリカの獣医師科学会でも同様に
無麻酔の歯石除去がいかに危険であるかが説明されています。
以下、一部抜粋、改変になります。
少し長いですが、とても大切な内容ですのでご一読ください。

1)歯石は歯周炎の直接的な原因ではないので、歯石をとったからといって
  歯周炎を予防したことにも、治療したことにもなりません。
  歯石をとっても、訓練を受けていないヒトが歯石を除去し、
  歯面のポリッシングや歯磨き指導をしない、鉗子などで歯面の歯石だけをとるといった
  行為により歯垢のつきやすい歯面を作ってしまいます。

2)ハンドスケーラーや鉗子で歯石を取るのは、危険な行為です。
  これらの器具は、先端に刃物が付いていて、歯面ではよく滑ります。
  イヌやネコは動く、スケーラーは滑るので、歯肉や舌、口腔粘膜を容易に傷つけます。
  鉗子で歯石を割って除去するときに、歯を一緒に折って露髄させてしまった例もあります。
  とれた歯石がのどに詰まったらこれも大変です。
  歯がぐらぐらしている状態で歯石をとろうとすれば、
  歯根を残したまま歯が折れる、あるいは顎の骨を折る危険もあります。

3)歯周炎が発症していれば、歯肉の下(縁下と呼びます)にポケットを作っていたり、
  歯肉が後退して一部歯根が見えていたりします。歯肉より上に使うスケーラーでは、
  歯肉が傷だらけになり状態はさらに悪化します。
  歯肉が後退して一歯根が見えているところをスケーラーでいじっても痛みが生じます。
  このような危険な行為は動物に痛みばかりでなく恐怖感を与えることになります。
  ポケットができているところは、歯周炎の進行の最前線です。
  ここを清浄化して治療できなければ、歯周炎を放置したことと同じで、
  動物に恐怖や痛みを与えるばかりで、治療になりません。
  歯周炎を悪化させる原因を作ることにもなりかねません。

4)上顎第1~2後臼歯、上顎の奥のほうにあって、口をあけてじっとしていないと
  ここの歯石を除去することはできません。
  また、上顎歯の内側は、特に犬では、深いポケットを作りやすく、
  鼻腔への瘻孔が容易に形成される個所でもあります。
  この領域への無麻酔でのアプローチも危険です。
  さらに、下顎歯は、特に内側が歯垢がつきやすく、ここへのアプローチは舌があって、
  舌下部には大きな血管や唾液線の導管も走っているので、
  無麻酔では、この領域へのアプローチは不可能でしょう。

5)無麻酔で、上記のような行為を病院やサロンで行うと、
  家でのケアをしにくくなることが多くなるようです。
  外ではじっとしていても、家庭では言うことを聞いてくれないし、
  口も触れないという声をよく聞きます。
  歯周炎の原因は歯垢中の細菌です。歯垢は数時間で歯の表面を覆います。
  定期的に歯垢を除去することが歯周炎の予防であり、それが一番の治療となります。
  家庭でもはみがきができるように指導すべきで、
  痛みを伴う口腔内への行為はできる限り避けるべきでしょう。

他にもたくさんありますので、
ご興味ある方は上のリンクからご覧になってください。
僕が一番思うことは、この文章の中の、
「動物に痛みばかりでなく、恐怖感を与える」
といったところです。
これはとても心が痛いです。
麻酔が怖い気持ちはわかりますが、
無麻酔の処置はもっと怖いことが多いと感じます。

毎日のオーラルケアで予防歯科を!

できるだけ、麻酔をかけての歯科処置を行わない様にするためにも、
毎日のオーラルケアが大事です!
オーラルケアについては
こちらのブログも参考にしてください!!

歯石除去した後の口の中

毎日のことでとても大変だと思いますが、
少しでも楽しくできるよう、いろいろ工夫したいですね。
わからないことがあればお気軽にご相談ください!

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