みなさんこんにちは。スタッフの鈴木です。
日中の日差しが暖かくなる日も多くなってきましたね。
メス猫は長日繁殖動物と言って、日照時間が長くなると
発情する動物です。
特に外で生活をしている猫はこの特徴が顕著に現れる
ため、避妊をしていない野良の子達はこれからの暖かく
なる時期は繁殖期となり、出産・子育てをする猫が
多くなります。
春になり新生活・新学期が始まるとともに新しい犬猫を
お家に迎える方も多いかと思います。
今日はそんな、子犬・子猫の時期に特に多い誤食について
お話しします。
誤食
みなさんは、誤食と聞くとどんな物を思い浮かべますか?
よく耳のするのは、玉ねぎ・ねぎ・チョコレート・
レーズンなどの犬猫が食べると中毒になる食べ物や、
ペットシーツ・ティッシュ・ぬいぐるみの綿など
生活用品で食べると胃や腸に詰まり物理的に体に害のある
ものなどが多いかと思います。
しかし、これ以外にも誤食物はいっぱいあり、動物病院
では意外な物を食べてしまい来院する子も少なくありません。
また、誤食は特に若年齢の犬猫に多く、
誤食をする約76%が0~2才で発生します。
意外な誤食物その① 「熱さまシート」
熱さまシートや冷えピタといった商品名で知られている
冷却ジェルシート、特に今の時期、新型コロナウイルスや
インフルエンザの感染で使用する方も多くなるかと思います。
この冷却ジェルシートは冷んやりした感覚や清涼感のある
香りから、誤食してしまう子は多いです。
冷却ジェルシートは水に濡れると大きく膨らみます。
そのため、誤食してしまうと胃で膨張しそのまま
胃や腸に詰まる危険性がとても高いです。
胃の中にある状態だと静脈から薬を入れ嘔吐させる
催吐処置や全身麻酔をかけての内視鏡での摘出、
腸まで進んでしまうと全身麻酔をかけ開腹をし、
腸を切開して取り出します。
腸を切開した場合は、術後に術部が離開するリスクが
あるため約1週間ほどの入院が必要となる場合があります。
意外な誤食物その② 「保冷剤」
近年はペットの熱中症への関心も高くなり、ペット用の
冷却グッズも多くなりました。
その中でも、冷えても柔らかいタイプの保冷剤には
エチレングリコールという物質が使われており、
エチレングリコールは犬猫が誤食をしてしまうと中毒に
なる危険な物質なんです。
症状としては、接種後1~2時間以内にふらつきや運動失調
などの神経症状が見られ、その後急性腎障害の症状
(初期には多飲多尿、24~72時間程でおしっこの尿が極端に減り最後は無尿)が現れます。
エチレングリコールの致死量は1kgあたり4.2~6.6mlと
言われており、少ない量でも死に至る恐れのある危険な
誤食物になります。
また、エチレングリコールは舐めると甘い味がするため
誤食をする危険・大量に食べてしまう危険が十分にあります。
食べた量にもよりますが、処置としては誤食後1~2時間
であれば静脈から薬を入れ嘔吐させる催吐処置を行い、
活性炭などの吸着剤を使用して、体内に吸収される
エチレングリコールの量を減らします。
誤食から時間が経ち体内に吸収されてしまった場合は
入院をさせ24時間静脈から点滴を流し、薬を投与して
治療を行なっていきます。
とても身近なものかつ、必ず犬猫の側で使用するもの
なので注意が必要です。
意外な誤食物その③「不織布マスク」
2019年の冬に新型コロナウイルスが流行してから3年が
経ち、マスクをする生活も当たり前になっています。
新型コロナウイルスが流行し始め特に増えた誤食物が
不織布マスクです。
多くの子は、ゴムの部分やノーズワイヤーを噛んで遊んで
いるうちに噛みちぎって食べてしまったり、
飼い主が取り上げようとした際にムキになって興奮し
飲み込んでしまうケースが多いです。
マスクは、丸めた形のまま飲み込んでしまうとそのまま
胃や腸に詰まる危険があります。
処置としては、マスクは食べた量にもよりますが、
誤食後1~2時間以内であれば静脈から薬を入れ嘔吐させる
催吐処置や量が多く胃にある状態であれば全身麻酔を
かけての内視鏡での摘出、腸まで進んでしまうと
全身麻酔をかけ開腹をし、腸を切開して取り出します。
マスクはいたずらや遊び物として好む犬が多く、
テーブルの上に置いていたものを取って遊んでいたり、
車の中で留守番させている間に置いてあったマスクを
噛んで遊んでいたりと、目を離したすきに…という
ケースが多いです。
意外な誤食物その④「人の薬」
飼い主さんがいつも服用している薬を、シートの上から
噛んで食べてしまったという子はとても多いです。
人の薬の中には服用しやすいように糖でコーティング
されているものや、口の中で溶けやすいもの、
味のついたものがあります。
シートを噛む感触に加え、この薬の味や匂いも加わり
口にする子が多いのでしょう。
動物病院でも処方する薬の中には、人用の薬もあります。
しかし、当然ながら犬猫と人では体重が違うので薬の用量
が全く違います。
そのため、薬の成分が中毒になるというよりは犬猫に
とって用量が多すぎて中毒になってしまう事の方が多いです。
薬によっては、ふらつきや運動失調などの神経症状、
嘔吐下痢、他にも腎臓や肝臓などの臓器に大きく
負担をかけてしまう危険性があります。
処置としては、誤食後1~2時間以内であれば静脈から薬を
入れ嘔吐させる催吐処置を行い、誤食から時間が経ち
体内に吸収されてしまった場合は、飲んだ薬の種類や量に
より治療が異なりますが、基本的には入院治療が必要となります。
最後に
経験的にも、一度誤食をしてしまった子は高確率で繰り返します。
犬猫の誤食は、人側の管理不足により起こってしまう事故です。
しかし、逆を言うと人側の管理によって防ぐことができます。
飲み込む可能性のあるものは犬猫の手の届く所に置かない、
蓋つきの入れ物に収納する、
家でのお留守番・少しの間車の中でお留守番させる場合は
ケージやサークルを使うなど、
お家の状況やその子にあった方法で管理をしてあげて下さい。
特に、異物が腸に詰まり手術をする場合、
臓器へのダメージや術後に離開するリスクなど
とても簡単とは言えない手術が必要となります。
もし、お家の子が誤食してしまった時には待たずに
まずは早めに動物病院へご来院ください。
その際は「何を」「いつ」「どのくらい」食べてしまった
のか分かるようにしておきましょう。