みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
5月27日、28日は
小動物臨床血液研究会、日本獣医輸血研究会の
合同開催に参加してきました。
場所は東京の日本獣医生命科学大学でありました。
僕は初めて行ったのですが、とても綺麗な大学でした。
血液学の話を一日中勉強できて、とてもよかったです。
より血液学の知識が深まりました。
また、翌日29日は私事ではありますが、親族に不幸があり、
臨時休診とさせていただきました。
みなさまには大変ご迷惑、ご不便をおかけいたしました。
ご協力、温かいお言葉、ありがとうございます。
久しぶりに会った実家のレオンです。
17歳となり、だいぶお爺さんになっていました。
僕のことを忘れてなくて喜んでくれていました。
梅雨の時期になり、僕はなんとなく
落ち込みがちになってしまう季節です。
意識的に元気に明るく!がんばりたいです!
さて、本日は血栓症のお話です。
動物の血栓は非常に難しい分野です。
ですが、とてもとても大切な分野です。
血栓形成のメカニズム
血栓とは、血液中の凝固物質が集まってできる塊のことです。
血栓形成は、生体の防御機構の一部であり、出血を止めるために必要です。
血栓形成は、血液凝固系と血小板の働きによって進行します。
具体的には、血液中の凝固因子が活性化され、
フィブリンというタンパク質が生成されます。
フィブリンは網目状の構造を形成し、
血液中の赤血球や血小板を固めて血栓を作ります。
血栓の形成とそのリスク要因
血栓の形成には、さまざまな原因とリスク要因が関与しています。
一般的な原因としては、血液の循環異常や血管の損傷があります。
また、特定のリスク要因も血栓形成を促す可能性があります。
例えば、人では高齢、肥満、運動不足、喫煙、妊娠、
抗凝固薬の使用などが挙げられます。
動物の場合、蛋白漏出性腸症や腎症、クッシング症候群、心筋症などが
血栓症のリスクを上げる疾患としてよく知られています。
血栓症の症状と診断
血栓が形成されると、その部位によってさまざまな症状が現れます。
一般的な症状としては、腫れ、疼痛、赤み、発熱などがあります。
肺に血栓ができると肺血栓塞栓症として呼吸器症状が、
脳に血栓ができると脳梗塞、心臓であれば心筋梗塞のように、
症状は様々だということがわかると思います。
血栓の診断には、身体診察、血液検査、超音波検査、CT、MRIなどが使用されます。
どれもこの検査をすれば間違いないというものはなく、
総合的に判断する場合がほとんどです。
近年では凝固亢進マーカーの一つである、
トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)なども測定できるようになり、
従来のFDPやD-dimerとともに血栓症の診断ツールが増えてきています。
血栓症の治療
血栓はなかなか目で見えないため、診断も難しく、
さらに症状は急に起こり、かつ重篤な場合も少なくありません。
非常に怖い病態であると思います。
血栓リスクをかかえている患者さんには、
抗血小板療法や抗凝固療法などが用いられます。
場合によっては外科的に摘出する場合もあります。
猫の血栓塞栓症に対する最新論文
血栓症の治療薬には様々なものがありますが、
よく使われる薬にクロピドグレル、アスピリン、
低分子ヘパリン、リバーロキサバンなどがあります。
血栓塞栓症のリスクのある肥大型心筋症(HCM)の猫に対して、
クロピドグレルとリバーロキサバンを単独で投与した場合と
併用した場合で、血小板機能に対する効果を評価した報告が、
2023年の5月にjournal of veterinary internal medicineに
掲載されました。
その結果、副作用を示した猫はいませんでした。
3つの治療法(クロピドグレル単独、リバーロキサバン単独、二剤併用:DAT)のうち、
DATのみが活性化血小板数を有意に減少させ、
トロンビン生成における最大反応速度を遅らせたというものでした。
クロピドグレルと同様に、DATはADPを介した血小板凝集を阻害しました。
一方でリバーロキサバン単独では、ADPに反応した凝集と活性化が増加しました。
結論として、クロピドグレルとリバーロキサバンを組み合わせた治療は、
クロピドグレルまたはリバーロキサバンのいずれか一方を用いた単剤治療よりも、
ネコの血小板の活性化、アゴニストに対する血小板反応、
トロンビン発生を安全に減少させるというものでした。
ちょっと難しい内容でしたが、二剤併用して出血のリスクなども心配でしたが、
副作用も少なく、より血栓の予防になることがわかりました。
こういった臨床に側した報告はとても参考になります。
まとめ
今回は血栓症のお話をさせていただきました。
やや難しい内容でした。
血栓の話は多くの病気と結び付きますし、
特に腫瘍や血液疾患とは切り離せない分野になります。
今後の報告に期待したいです。