みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
毎日コロナウイルスのことが報道されています。
見えない恐怖は不安です。早く終息してほしいですね。
こういうとき、ワクチンの大切さも感じますね。
僕が担当する時のブログは新しい論文の紹介になりつつあり、面白くないかもしれません。
趣向を変えてみようかと模索中であります。
さて、貧血には再生性貧血と非再生性貧血の2種類があります。
再生性貧血とは工場である骨髄ががんばって赤血球を作っている状態の貧血で、
非再生性貧血は工場である骨髄が正常に動けなくなったり、赤血球の材料がなかったりする状態の貧血です。
この時、非再生貧血の原因を鑑別するために骨髄検査が必要になる場合があります。
非再生性貧血の原因もたくさんありますが、その中でも比較的よく遭遇する疾患が、
非再生性免疫介在性貧血(NRIMA: Non-Regenerative Immune-Mediated Anemia)と呼ばれる疾患です。
(NRIMAについてはコチラの記事もご覧ください)
NRIMAの診断には骨髄検査が必須であり、さらにその後の免疫抑制治療が必要になります。
さて、このNRIMAという病態に対して新たな病態の考え方が数年前からある研究グループより提案されています。
それがPIMA (precursor-targeted immune-mediated anemia)というものです。
簡単にいうと、骨髄の中の赤血球をつくる細胞が免疫によって破壊されて起こす貧血のこと。
NRIMAと同じでは?と感じる先生方も多いと思いますが、これまでに報告されたNRIMAの症例は免疫が介した溶血が
あってもなくてもNRIMAに含まれていたり、再生像の出る前のIMHAが含まれていたり(可能性の話ですが)と、
基準が曖昧だったりで、病気の母集団に一貫したものがなく評価が困難だったりしました。
そのような背景があり、2017年に論文雑誌のVeterinary Clinical Pathologyに
Cynthiavde A. LucidiらがPIMAの考えを提案しました。
診断基準をより明確にし、さらにその中でどのあたりの細胞が免疫学的破壊のターゲットとなっているのかを
グループ分けしています。面白いのが、赤血球を貪食する細胞によってそのグループ分けをしているところです。
骨髄を見るポイントというか、目の付け所がすごいなと感じました。
さらに同じ研究グループが2019年に論文雑誌のJournal of the American Veterinary Medical Associationに
PIMAの診断基準を満たした66例の犬の報告を行いました。
[Clinical features of precursor-targeted immune-mediated anemia in dogs: 66 cases(2004-2013)]
この論文では診断基準の明確化、ステージごとの骨髄の特徴、治療反応などがまとめられています。
前回の報告にもありましたが、骨髄の組織でコラーゲンを含む骨髄線維症の評価などがより詳細となっています。
さらに治療反応のみられる期間や再発など臨床情報が追加され、より分かりやすい内容となっています。
まだまだ一つの考え方であり、十分なコンセンサスも得られていないので、診断名として取り扱うことは少ないと
思いますが、個人的にはとても印象に残った論文でした。
既存の病態、診断基準などに疑問を持ち、それをクリアーにしていき、報告する。
それが新たな病気の考え方となり、もしかしたらよりよい治療に繋げることができるかもしれない、
まさに臨床家の大きな役割?目標?の一つであるような気がします。
日進月歩の獣医療です。常に勉強を続けていきます。
【原文はこちら】
Histologic and cytologic bone marrow findings in dogs with suspected precursor-targeted immune-mediated anemia and associated phagocytosis of erythroid precursors.
Clinical features of precursor-targeted immune-mediated anemia in dogs: 66 cases (2004-2013).