FeLVとFIV感染症について(その1)

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で自粛・自粛でなんだか気持ちまで落ち込んでしまいそうになりますね。
ですが、ウイルス感染を拡大させないためには、自粛はとても大切だと思います。
僕はこんなときだからこそできることを探して、自分を磨こうと思っています。

さて、今日は猫白血病ウイルス(FeLV)感染症と猫エイズウイルス(FIV)感染症のお話です。
FeLVやFIVについては、初めて猫を飼育する時、猫を保護した時、ワクチンを打つ時などに
ウイルスについてや、ウイルス検査について、お話を聞いた方も多いのではないでしょうか?
FeLVやFIVは怖いウイルスで、罹ってしまうと亡くなってしまうと思っている方もいらっしゃると思います。
どうやって感染するのか?どのように消毒すればいいのか?
検査はいつすればいいのか?感染してしまったらどのように生活していけばいいのか?
など、不安はたくさんあると思います。
中には飼っている猫が「白血病」に罹ったと勘違いしてしまうこともあります。
獣医師や保護団体の方、インターネットの情報、色々な意見があります。
ウイルス検査といっても、検査方法がいくつかあり、その解釈も一定していません。我々も悩むことはたくさんあります。

2020年、つまり今年に入って、Journal of Feline Medicine and Surgeryという論文雑誌に
「2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines」という論文が発表されました。
AAFPとはAmerican Association of Feline Practitionersの略で、米国猫医学会とも訳されます。
Retrovirusとはレトロウイルスのことで、この場合、FeLVやFIVをさしています。
つまり、アメリカの猫医学会がFeLVやFIV感染症について検査やその扱い方のガイドラインということになります。
FeLVやFIVについて病態、検査系、飼育方法などがとてもよくまとまっていますが、(僕にとっては)英語で書かれた長い論文です。
非常に大事な分野であり、われわれ獣医師、猫の飼い主様、保護した方、これから飼う方にとって有用な情報となると思います。
今回から数回にわたり、この論文のお話をしたいと思います。

【病態について】
・FeLVの感染経路について
 母猫からの水平・垂直感染、感染猫と一緒に暮らす、ケンカをするなどで感染

・FeLV感染症について
 現在、3つの感染パターンがあるとされ、
 abortive infection、regressive infection、progressive infectionと呼ばれる。
 たとえばprogressive infectionでは他の感染パターンに比べ、短命となることが知られている。
 
・ FIVの感染経路について
 最も多いのはケンカ。母ネコからの感染は実はあまり一般的ではない。
 一緒に暮らしてもケンカしない限りあまり感染しない。(感染リスクはあるので注意)

・FIV感染症について
 FIVに感染すると体の中のCD4+T細胞(ヘルパーT細胞)、CD8+T細胞(細胞傷害性T細胞)が減少する。
 高グロブリン血症がよくみられる。

少し聞き慣れない言葉もあり、難しいかもしれません。
FeLVは仲良しでも感染するウイルスで、FIVは仲が悪い同士が感染するなどと表現されます。
ですが、例えばFIVであっても唾液などを通し感染するリスクはゼロではないので注意が必要です。
やはりどちらのウイルスであっても、感染している猫を感染していない猫と同じ環境で飼育するのは
あまりお勧めできません。

FeLV感染症の感染パターンは非常に複雑で、わかりにくいと思います。
簡単にいうと、
「血液中にウイルスがいる」「DNAの中に入っている」「ウイルスの抗体を持っている」
の3パターンとなります。それぞれウイルスの検出の仕方が異なります。

一般的にはFeLVは、院内での検査キットを用いてウイルス抗原を検出します。
これはprogressive infectionの検査と考えることができます。
その他、PCRを用いてDNAの中にFeLVがいないかをみる検査などもあります。
regressive infectionなどはこのPCR検査で発見することができますが、
どの検査を行うかは、ケースバイケースとなります。
通常、progressive infectionの猫が重篤な病気を発症しやすく、
regressive infectionだった猫のウイルスが再活動しだすと重篤な病気を発症することがあります。
院内検査で陰性だったのにFeLV関連の病気になり、
実はDNA内FeLVがいた、なんてことが後になってわかることもあります。

FIVに関しては人のHIVによく似ており、
感染し、急性期に発熱などの症状を呈した後は、無症状な期間(無症候期)が数年続きます。
その後、免疫の機能障害などが進行していき、慢性的に感染症を繰り返すようになります。
FIV感染の猫は感染していない猫に比べ、約5倍も「がん」になりやすいことなどがわかっています。

とても難しい分野で、わかりにくいとは思いますが、次回は診断編です!

【原文はこちら】
2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines.

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