データだけに捉われないこと

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
もう5月ですね!
今年も1/3が終わりました。
やりたいことの1/3ができているかと考えるとすでに焦ってしまいます。

毎回僕はブログを通して、比較的新しい論文の紹介を行なっています。
この一番の目的は僕の継続的な勉強のためです。
ブログという場を借りて、自分の備忘録をつけている感じです。
もちろん、何か一つでもみなさんの役に立てたらという思いもあります。

一方で、最新の論文=素晴らしい、革新的。ではありません。
英語の論文になっているからといって、全てを鵜呑みにすることもできません。
大事なのは情報の分別。取捨選択です。
その論文のバックグラウンドや統計処理の方法などを通して、
我々が必要としている情報にふさわしいのか、を判断する必要があります。

例えば、2015年にJournal of Veterinary Internal Medicineに投稿された、
犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の死亡率の予後因子に関するシステマティック・レビュー
では、実に1640本もの論文を調査し、さらにその中でしっかりと正確に比較検討できるかなどを
吟味し、その結果論文は6本まで絞られました。

そして、驚くべきことに最終的には
現在のところ犬のIMHAの予後を評価するための質の高いエビデンスはほぼない
と、結論づけられています。
一本一本の論文では予後因子など掲載はされているものの、システマティック・レビューでは
それが否定されています。

また、僕が腫瘍学の勉強に使用する教科書の一つである
「Tumors in Domestic Animals」には下記のような記載があります。

“Time lines and percentage rates should not be taken too literally.”
簡単に言うと、
生存期間や生存率といった時間などの値に捉われるべきではない。
ということだと思います。

もちろん、過去の医学の積み重ねで今の多くのデータが存在し、
それを飼い主様に説明することで、その病気の予後などをある程度伝えることができます。
それは覚悟であったり、治療方針を決定することであったり、
時には安楽死の選択であったりと、色々なことに使われます。

ですが、例えば生存期間中央値が2週間という癌があったとして、
どうしても飼い主様は獣医師から説明を受けた時、
その数字のインパクトが強すぎて、その値に執着してしまいがちですが、
それは全ての症例に当てはまるわけではないということや、
そのデータが実は母集団がとても少ないようなものも含まれていること
などをしっかり理解して考える必要があります。
一つのデータとしては参考にしつつ、全てを鵜呑みにしないということは
とても大切なことであると思います。

僕自身、このことは普段から意識的に気をつけようと思っています。
論文はとても勉強になりますし、診療の助けとなります。
ですが、目の前にいる患者さんが全てであり、
その子その子にあった治療選択が重要です。
どんな些細なことでも、積極的にお気軽に相談してください。

今回は論文はとても大事だけど、目の前の患者さんの状況が最も大事という話でした!
ついに6つ葉のクローバーをみつけました!
これはもったいなくて抜けませんでした!!

PAGE TOP