犬や猫の血液型のお話

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
今年も残すところ3週間ほどになりました。
毎年思うのですが、12月だから、もう今年は終わりだから、
来年から始めるので12月は怠けてしまおうというのは
とてももったいないことです。
今日の一日も年始の一日も同じ一日です。
「今日から」はじめてみませんか!?

年末年始は診察時間に変更があります。
予めご確認のほど、よろしくお願いいたします。
また、診察受付時間は午前も午後も診察時間終了の30分前まで
(午前は11時半、午後は19時)とさせていただいております。
手術時間の確保や働き方改革などのため、
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
写真は先日、飼い主様からいただいたトネリコです。
とても素敵に植えていただきました。
元気に育つように水やりなどを欠かさないようにします。

さて、本日からの論文は2021年にJournal of Veterinary Emergency and Critical Careに
3本掲載された、「AVHTM(獣医血液学・輸血学協会?)による小動物の輸血反応についての
コンセンサスステートメント」についてです。
この論文は3本立てとなっており1本1本がとても長い論文です。
読むのがとてもとても大変です。。
Part1から3まであり
Part1:輸血反応の定義と臨床徴候
Part2:輸血反応の予防とモニタリング
Part3:輸血反応の診断と治療
が書かれています。
とても勉強になる話ですが、すごく難しい話ですので、
まずは基礎知識として血液型のお話をしたいと思います。

血液型とは?

人でA型やO型などと血液型があるように、
犬や猫にも血液型があります。

そもそも血液型とはどのように判断されているのでしょうか?
例えば下の図は人のA型の血をすごく簡単に書いています。
(本当はもっと多くの抗原(Rhなど)が関与していますが)
A型の赤血球にはA抗原という抗原が存在します。
そして血漿中には抗B抗体という抗体が存在します。
このA抗原をもつ赤血球を持っている方をA型と判断します。

B型の方は逆に赤血球にB抗原をもち、抗A抗体を持っています。

AB型の方はA抗原、B抗原をともにもち、抗Aや抗B抗体をもっていません。
抗A抗体はA抗原に対して攻撃をしてしまうので、
自分の持っている抗原に対しての抗体がないということです。

この抗原と抗体の反応を用いて血液型を判定しています。
A型は抗A抗体に反応する。
B型は抗B抗体に反応する。
AB型は抗A抗体、抗B抗体どちらにも反応する。
といったものです。
ちなみにO型は抗原を持たず、抗体だけを持っています。
少しお分かりいただけたでしょうか?
本当は人の血液型はもっとたくさんの抗原、抗体を判断するので、
もっともっと複雑ですので注意してください。

犬の血液型

では犬の場合はどうでしょうか?
現在犬ではDEA1.1という抗原が陽性か陰性かで血液型を判断します。
なのでDEA1.1陽性(プラス)と陰性(マイナス)の2つの血液型で分けています。
ちなみにDEA1とはDog Erythrocyte Antigen1(犬赤血球抗原1)の略です。
これは現状一般的にDEA1.1が陽性かどうかの判定キットしかないので、
その二つに分けているだけで、本当はDEA1.1だけでなく1.2や3などと
13種類以上の血液型があると言われています。

犬で血液型が必要になるのはやはり輸血の時です。
この輸血の際の輸血反応にもっとも関与するといわれているのが、
このDEA1.1の抗原になります。
なので獣医療ではDEA1.1の判断が大事になるのです。

猫の血液型

次に猫の血液型についてです。
猫は人と同じ様にA型、B型、AB型に分けられます。
O型はありません。
また猫では地域や品種によっても偏りがあることがわかっています。
日本の雑種猫のほとんどはA型といわれており、
B型が10%未満、AB型はほぼいないと考えられています。
ですが、B型の猫は時折遭遇します。

輸血について

犬や猫にも血液型というものがあることがわかっていただけたと思います。
そして、人の輸血と同様に犬や猫でも輸血の適合を考える必要があります。
上の図が簡単に表した適合表になります。
特に猫でB型の猫にA型の血液を輸血すると重篤な輸血反応が起こると考えられます。
このようなことから、輸血前にはドナーもレシピエントもしっかりと
血液型を判定する必要があります。

初めての輸血は問題ない?

犬が初めて輸血をするときに輸血反応は起きにくいことは事実です。
それは抗体を持っていないからと考えられています。
もちろんまったく起きないわけではなく、2回目、3回目と比較すると
輸血反応は起きにくいです。
しかし、だからといって初回なら血液型を見なくていい、
ことにはなりません。
問題となるのは2回目以降に抗体が作られてより輸血反応のリスクが
高まったりするからです。

また近年ではDEA以外にもDal抗原などの新たな抗原が
知られるようになってきました。
これはダルメシアンやシーズー、ドーベルマン、ラサ・アプソなどの犬種では
特に欠損していることが多いとされており、
輸血反応のリスクにつながると考えられています。
シーズーなどは飼育頭数も日本でも多く、
Dal抗原を一般的には検査できないため、
クロスマッチ試験などで輸血前にはしっかりと
適合を判断する必要があります。
特に2回目以降の輸血には注意が必要です。

 

いかがだったでしょうか?
今日は論文の話は全く出てきませんでしたが、
このような基本的なことを理解して初めて、
輸血反応のことが理解できると思います。
前もって自分のペットの血液型を知っておくことは
いざというときに役に立つかもしれません。

次回からは論文の内容に迫っていきます!

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