猫の避妊手術と乳腺癌

みなさんこんにちは、スタッフの鈴木です。

寒くなってきて、寝ていると布団の中に犬猫たちが

潜りこんでくるようになりました。

犬猫は私たち人間よりも体温が高いので、

お腹の上に乗ってきたり、一緒に寝ていると

湯たんぽのように暖かく感じます(笑)

今日は猫の避妊手術についてお話しします。

避妊手術と乳腺癌の予防

避妊手術を行う1番の目的は病気の予防です。

避妊手術では卵巣・子宮の病気(子宮蓄膿症や卵巣・

子宮の腫瘍)、乳腺癌を予防する事ができます。

今日はなぜ「猫」だけに焦点を当ててお話しするかというと、

メス猫は避妊手術をする年齢によって

「乳腺腫瘍」の予防率が大幅に変わるからです。

【避妊手術の時期と乳腺癌の予防率】

当院では6ヶ月齢から避妊手術をすることができます。

6ヶ月齢で避妊手術を行うと91%も乳腺癌を予防する事が

できますが、12ヶ月齢を超えてしまうと予防率が

11%までも下がってしまいます。

そして24ヶ月齢(2才)を過ぎてしまうと、避妊手術を

することによって乳腺癌を予防する事はできなくなって

しまいます。

猫の乳腺癌

猫の乳腺にできる「しこり」のうち約80%が悪性

言われています。

また、猫には8個の乳腺がありそれぞれの乳腺に乳腺癌が

発生する可能性があるため同時に複数の乳腺癌が

確認される事もあります。

猫の乳腺癌は発見時の腫瘍の大きさにより予後が大きく

変わります。

【腫瘍の直径と生存期間中央値】

このように、猫の乳腺癌は2cm以下で発見できるかどうか

が、その子の予後を大きく左右します。

乳腺癌の症状はある程度進行すると痛みが出てきます。

「がん」は人の方では末期の患者さんの7割の方が

主な症状として痛みを体験し、その内8割が激痛であると

言われています。

もちろん、犬猫は言葉を話すことが出来ないので

このようなデータはありませんが

人と同様に犬猫も「がん」が進行すると痛みが発生し、

痛みにより元気食欲が著しく低下したり腫瘍部位を触ると

激しく嫌がります。

また、乳腺癌は放っておくとどんどん大きくなり、次第に

腫瘍自体が弾けて膿が出たり出血を繰り返すようになります。

「がん」自体の痛みに加え自潰した不快感や膿が出るので

臭いもするようになります。

さらに、乳腺癌が転移をするとその転移をした臓器に

異常をきたします。

例えば、肺に転移をすると咳・息切れ・息苦しさや、

進行すると胸に水が溜まり、安静時でも激しい運動をした

後のような呼吸状態となりとてもきつくなります。

乳腺癌の治療

猫の乳腺癌の代表的な治療としては「外科手術」と

「化学療法(抗がん剤)」が挙げられます。

そして猫の乳腺癌の場合、まず1番の治療法の選択として

は「外科治療」になります。

【外科手術】

前述したように猫の乳腺は8個あり、すべてリンパ管で

繋がっています。

そのため、1つの乳腺に乳腺癌が出来た場合でも片側の

乳腺もしくは両側の乳腺を全て摘出する手術が再発防止

のために有効だと分かっています。

【化学療法(抗がん剤)】

基本的な知識として、乳腺癌だけでなく「がん」という

病気では一部を除き固形の腫瘍が1㎤以上あるものに

対しては化学療法(抗がん剤)のみで腫瘍を小さくして

治すことはできないとされています。

そして、現時点での獣医療では猫の乳腺癌で化学療法が

効果的であるというエビデンスは残念ながらありません。

しかし、全く効果が無いというエビデンスもありません。

上記のように、猫の乳腺癌の治療法の第一選択としては

外科手術になるため化学療法は外科治療後に、できるだけ

転移をさせないように補助的な治療として行うような

位置付けになります。

キャットリボン運動

当院でもたびたび紹介させていただいている、

キャットリボン運動は「乳腺癌で苦しむ猫をゼロにする」

というスローガンで猫の乳腺癌についてや、

家でのセルフチェックの仕方、チャリティー活動など、

猫の乳腺癌についてわかりやすくたくさんの情報を発信

しているものです。

当院でも販売しているキャットリボンバッジは、バッジの

サイズが2cmとなっており、このサイズは前述である

2cm以下で腫瘍を発見出来るかが予後を大きく左右するという

2cmをモデルとして作られています。

そして、このバッジの費用は全額、キャットリボン運動へ

と寄付されます。

 

最後に

ここまで、猫の乳腺癌についてお話ししましたが、

いかがでしたか。

今では人の乳腺癌は早期に発見し治療をすれば治せる

可能性が高い病気となっています。

しかし、猫の乳腺癌はそうではありません。

そのため、早期に避妊手術をし乳腺癌を予防することが

何よりも大切になります。

中には、成猫を保護しその後避妊手術をしたという方も

いらっしゃるかと思います。

そういった子の場合、ぜひ定期的にお家でセルフチェック

をしてあげて下さい。

下記のキャットリボン運動の公式サイトにはお家でできる

セルフチェックの仕方がわかりやすく載っているので

参考にしてみて下さい。

https://catribbon.jp/check/

 

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