犬と猫の輸血のお話

みなさん、こんにちは。
院長の諏訪です。
ゴールデンウィークもあっという間に過ぎましたね。
気候も良く、楽しくお出かけができたでしょうか?
蚊が出てくるようになり、ノミやマダニもしばしば見かけるようになってきました。
予防できる病気はしっかり予防したいですね!

今月は25日の午後から26日は東京の学会に参加します。
休診となりますので、ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

写真は2020年4月に買ってきたトネリコです。
全然成長しなかったり、葉が全部枯れてしまったり、
山あり谷ありを繰り返しながら成長していきました。
現在の姿は、このブログの最後です!

当院は腫瘍疾患や血液疾患に力を入れていることもあり、
特に血液疾患において、貧血の患者さんをご紹介いただくことは多いです。
この貧血の治療の一つに輸血があります。
輸血に関してはこの病院ブログでも何度も取り上げてきましたが、
定期的に更新していくことが大事だと思っていますので、
本日は輸血についてお話ししたいと思います。

輸血とは

輸血とは、大量出血や重度の貧血などで生命が危機的状況にある状況に対し、
別の健康な犬や猫から採取した血液を投与することです。
犬や猫の輸血は、生命を救う重要な治療法ですが、人間の輸血とは異なる点があります。

輸血が必要となる状況

以下のような状況で、輸血が必要となります。

  1. 大量出血:事故やがんなどで大量の出血が起こった場合
  2. 重度の貧血:自己免疫性溶血性貧血やその他の疾患などで重度の貧血が生じた場合
  3. 血液凝固障害:血小板減少症や血友病などの血液凝固障害がある場合
  4. 特定の手術:大きな手術を行う際に、出血に備えて輸血が必要となる場合

などです。

血液型

犬や猫の血液型の話は以前に書かせていただきました→コチラ

現在犬ではDEA1.1という抗原が陽性か陰性かで血液型を判断します。
なのでDEA1.1陽性(プラス)と陰性(マイナス)の2つの血液型で分けています。
ちなみにDEA1とはDog Erythrocyte Antigen1(犬赤血球抗原1)の略です。
これは現状一般的にDEA1.1が陽性かどうかの判定キットしかないので、
その二つに分けているだけで、本当はDEA1.1だけでなく1.2や3などと
13種類以上の血液型があると言われています。

犬で血液型が必要になるのはやはり輸血の時です。
この輸血の際の輸血反応にもっとも関与するといわれているのが、
このDEA1.1の抗原になります。
なので獣医療ではDEA1.1の判断が大事になるのです。

また、猫の血液型は人と同じようにA型、B型、AB型に分けられます。
O型はありません。
日本の雑種猫のほとんどはA型といわれており、
B型が10%未満、AB型はほぼいないと考えられています。
ですが、B型の猫は時折遭遇します。

交差適合試験

輸血前にはドナーとレシピエントの血液の反応を確認する必要があります。
それが交差適合試験(クロスマッチ)や
間接抗グロブリン試験になります。
交差適合試験ではIgMによる反応を、
間接抗グロブリン試験ではIgGによる反応を検査します。
血液型を合わせて、さらにこのような検査をクリアして初めて、
輸血を行うことができます。

輸血のリスク

輸血反応の話も以前書かせていただきました→コチラ。

輸血はとても大事な治療法の一つですが、
リスクを伴う治療になります。
一種の生体移植と同じだからです。
この輸血反応のリスクを少しでも減らすために、
先ほどの交差適合試験などを組み合わせて、
しっかりモニタリングをしながら輸血を実施する必要があります。

ドナーの確保

さらに知っておいていただきたいことは、
人と違って動物には血液ドナーバンクなどの仕組みがないということです。
輸血が必要な時は急なことが多いですが、
実際には、必要な際にすぐに輸血ができるわけではありません。
あらかじめ血液を確保しておいたり、
ドナーとなってくださる犬や猫を見つけておく必要があります。

まとめ

輸血は、生命が危機的状況にある際の重要な治療法です。
しかし、輸血反応のリスクがあることや、
ドナーの確保が難しいことなど、課題も多くあります。
飼い主さまには、日頃からこうした知識を持っておいていただき、
もしもの時に備えていただければと思います。


ブログ冒頭に出てきたトネリコは4年間でここまで成長しました!
トネリコに負けないよう僕ももっと成長していきます。

PAGE TOP