輸血反応のお話①

みなさん、こんにちは。
今年も残すところあと4日ですね。
クリスマスを過ぎたあたりから一気に寒くなり、
年末の感じが増しました。
年末年始は休診となります。
ご迷惑をおかけしますが、
ご理解のほどよろしくお願いいたします。

さて、今日も前回の続きのお話になります。
とてもとても難しいお話です。
予めご了解ください。
2021年にJournal of Veterinary Emergency and Critical Careに
3本掲載された、
「AVHTM(獣医血液学・輸血学協会?)による小動物の輸血反応についての
コンセンサスステートメント」についてです。

Part1:輸血反応の定義と臨床徴候
Part2:輸血反応の予防とモニタリング
Part3:輸血反応の診断と治療

となっており、本日はPart1の論文のお話になります。
輸血反応とは血液製剤に対する生体の反応で、
軽度から生命を脅かすものまで様々です。
その輸血反応について理解を深めるために、
まずはPart1でその言葉の定義と臨床徴候を説明していきます。
ちなみに今回の輸血反応は赤血球、血漿、血小板に起因するものに
限定されています。

輸血反応の種類

発熱性非溶血性反応(FNHTR)
呼吸器系の反応
 輸血関連呼吸困難(TAD)
 輸血関連循環過負荷(TACO)
 輸血関連急性肺障害(TRALI) 
アレルギー反応
溶血反応
 急性溶血性輸血反応(AHTR)
 遅発性溶血性輸血反応(DHTR)
遅発性血清学的輸血反応(DSTR)
輸血伝播感染症(TTI)
低カルシウム血症/クエン酸中毒
輸血関連高アンモニア血症
低血圧性輸血反応(HyTR)
輸血後紫斑病(PTP)
輸血関連移植片対宿主病(TA-GVHD)

このように輸血には多くの輸血反応があります。
これらひとつひとつを理解した上で、輸血に臨む必要があります。

発熱性非溶血性反応(FNHTR)

FNHTRは
「輸血中または4日以内に38℃以上の発熱と
輸血前からの1℃以上の上昇」と定義されます。
(定義によっては24時間以内の発熱としている場合もあります。)

ドナーの白血球や血小板の影響がFNHTRの少なくとも
70%以上占めると考えられています。

急性呼吸器反応

呼吸器反応は輸血関連死の中で最も一般的です。
TACOは
「輸血停止後6時間以内に以下のうち3つ以上が
新たに発症または増悪した場合」と定義されます。
急性呼吸困難(呼吸困難、起立性呼吸、咳)、
BNPの上昇、中心静脈圧の上昇、左心不全、
体液平衡の正の証拠、肺水腫です。
人ではTACOの危険因子として
大量の血液投与、急速投与、慢性貧血患者の輸血、心臓病、呼吸器疾患の併発
などが考えられています。
ある論文では輸血した猫の3%にTACOが生じたとの報告もあります。

TRALIは2019年に2つのタイプの定義が提案されました。
typeⅠとⅡです。
typeⅠはARDS(急性呼吸窮迫症候群)の危険因子を持たず、
以下の基準を満たす患者とされます。
A.以下の条件で定義される急性の発症
Ⅰ.低酸素血症
Ⅱ.画像診断で両側性肺水腫を認める
Ⅲ.左房高血圧症の証拠がない、もしくは
  あっても低酸素血症の主因ではないと判断される
B.輸血後6時間以内に肺徴候が現れた
C.ARDSの代替危険因子との時間的な関係がないこと

typeⅡはARDSの危険因子を持つ患者と定義されます。
A.typeⅠのA、Bの所見
B.輸血前12時間の呼吸状態が安定している
TRALIを発症すると長期にわたる人工呼吸管理などが
必要となります。
血漿や血小板輸血でリスクが高くなると考えられます。
多胎の雌犬がドナーとなる場合、TRALIの発症を高くする可能性が
あると考えられます。
但し、ある研究では犬には妊娠によるアロ抗体がないことが示されており、
多胎の雌犬をドナープールから除外するべきではないといった報告も
あります。

アレルギー反応

輸血によるアレルギー反応はIgEによって引き起こされます。
一過性のものから生命を脅かすものまで様々です。
輸血中、輸血終了後4時間以内に起こると考えられています。
皮膚の症状(蕁麻疹、血管浮腫、掻痒)、
呼吸器症状(喘鳴、呼吸困難、低酸素血症)、
消化器症状などの
臨床所見に基づいて診断されます。
一般的にアレルギー反応は1回目ではなく2回目に起きます。

溶血反応

溶血反応には急性(AHTR)と遅発性(DHTR)があります。
また免疫学的と非免疫学的にも分けられます。
(ほとんどが免疫学的なものと考えれれます。)
免疫学的HTRは
輸血製剤とレシピエントの不適合に起因します。
非免疫学的HTRは
輸血された血球を損傷する熱的、浸透圧的、
機械的、化学的要因によって発生します。
AHTRは輸血中あるいは24時間以内に発生し、
背中や脇腹の痛み、寒気・悪寒、DIC、鼻出血、
発熱、血尿、低血圧、乏尿・無尿、腎不全などが
挙げられます。
人ではこれらの反応が輸血関連死の最大の割合を
占めていましたが、適合性試験の向上により、
この傾向は変わりました。

犬ではAHTRの報告はほとんどありません。
これは自然発生的なDEA1抗体が存在しないことなどが
考えられます。一方で2回目の輸血で発生した報告なども
わずかですがあります。
また猫では自然発生のアロ抗体がよく知られており、
致命的なAHTRを引き起こす可能性があります。
B型の猫にA型の血液を輸血すると、1.3±2.3時間と急速に
赤血球が破壊され、24時間以内で全ての赤血球が破壊されます。

犬も猫も過去に不適合な血液製剤で輸血をされたことがあると、
生死にかかわるAHTRを引き起こす可能性があります。

DHTRは輸血後24時間から28日間に発症するDAT陽性と定義されます。
(DAT:直接抗グロブリン試験)
DHTRで観察される溶血のほとんどはIgGによる血管外溶血と考えられます。
最近の犬-猫異種移植研究で39頭中25頭にDHTRが発生したと
報告されています。

まだPart1の半分くらいですが、
長くなったので本日はここまでとします。
輸血反応の話はとても難しく、一般の方にはわかりづらいと思います。
申し訳ありません。しかも今年最後のブログで。。
それでも次回はこの続きをしたいと思います!

原文はコチラ→https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33792171/

PAGE TOP