みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
12月も残すところあと2週間ほどとなりました。
この時期になると毎年、今年の忘れ物はないかと不安になります。
一年一年を大切にして、できる限り成長していきたいと思い、
日々勉強しているつもりですが、ついついさぼってしまうこともあり、
1月にやりたかったことを全て完遂できたか?と自分に問うと、言葉に詰まります。
まだまだ努力が足りないなと感じる12月です。
先日の11月30日に午前診療後に福岡県獣医師会の学術講習会の
講師をさせていただきました。
愛玩動物看護師さんを対象とした血液塗抹のセミナーでした。
みなさんすごく向上心があり、真剣に講義、実習を受けてくださいました。
こちらもいい刺激を受けました。
血液塗抹は毎日の積み重ねが大切です。
今回のことをきっかけにどんどん血液学を好きになってほしいです!
はじめに
猫の膀胱腫瘍は比較的まれではありますが、発生すると排尿障害や血尿などの
泌尿器症状を引き起こし、生活の質に大きく影響します。
膀胱腫瘍の多くは悪性で、特に移行上皮癌(TCC:Transitional Cell Carcinoma)が多く見られます。
膀胱腫瘍とは
猫の膀胱に発生する腫瘍は主に以下のような種類があります。
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移行上皮癌(TCC)
最も一般的な『悪性腫瘍』で、膀胱三角部(尿道と尿管の合流部)に発生しやすいとされています。
局所浸潤性が強く、尿道閉塞や周囲臓器への浸潤を起こすことがあります。 -
その他の悪性腫瘍
扁平上皮癌、腺癌、血管肉腫など(頻度は稀) -
良性腫瘍
乳頭腫など (きわめて稀)
症状
膀胱腫瘍の症状は、膀胱炎と似ているため早期診断が難しいことがあります。
⚫︎頻尿
⚫︎血尿
⚫︎排尿困難(排尿に時間がかかる、少しずつしか出ない)
⚫︎排尿時の痛み(鳴く、落ち着きがない)
⚫︎尿漏れ
⚫︎腹部の痛みや違和感
診断のための検査
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尿検査
・腫瘍細胞の検出、血尿、細菌感染の有無を確認します。 -
超音波検査
・膀胱内の腫瘤の存在や位置、大きさを確認します。 -
X線検査
・石灰化や膀胱壁の異常所見を評価します。 -
CT検査
・詳細な腫瘍の広がりや他臓器への浸潤、転移の有無などを調べます。 -
細胞診または組織生検
・腫瘍の確定診断のために、尿や膀胱壁から採取した細胞・組織を検査します。 -
膀胱鏡検査(可能な施設での検査)
・直接観察および生検が可能です。
治療法
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内科療法
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):ピロキシカムなどが抗腫瘍効果を示すことがあります。
化学療法:ミトキサントロンなどを使用することもあります。 -
外科的切除
腫瘍の位置が三角部以外であれば、部分的切除が可能な場合があります。
ただし、再発や術後の排尿障害のリスクもあり慎重な検討が必要になります。 -
放射線治療(可能な施設で)
難治性や手術不能な腫瘍に対して行うことがあります。 -
支持療法
抗生物質、鎮痛薬、排尿補助薬などを使用しQOLの維持を目的として行います。
予後
▶︎移行上皮癌は進行が比較的緩やかな一方、再発や転移が問題になることがあります。
▶︎治療により症状の緩和や生活の質を維持できる期間はありますが、根治が難しいケースも多いです。
▶︎生存期間は治療法によって異なりますが、『平均で6ヶ月〜1年程度』とされています。
おわりに
猫の膀胱腫瘍は発見が遅れやすい腫瘍の一つです。
しかし早期に適切な治療を行うことで症状を軽減し、生活の質を向上させることが可能です。
頻尿や血尿といった症状に気づいたら、早めの受診をおすすめします。







