健康診断について

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。

今回は、犬と猫の「健康診断」についてお話しします。

「うちの子、元気そうだし、健康診断って必要かな?」と思われる飼い主さんも多いかもしれません。でも実は、元気に見えるからこそ受けておいてほしいのが健康診断です。

今日は、血液検査の大切さをお伝えしながら、同時に「血液検査だけでは見えないものがある」という、日々の診療で強く感じていることもお話しさせてください。


目次

動物の体は「言葉で伝えてくれない」

人間なら「最近なんだかだるいな」「食欲がないな」と自分で気づいて病院に行くことができます。でも動物は違います。体の不調を言葉にすることができません。

さらに、動物には本能的に「体の弱さを隠す」習性があります。野生では弱みを見せることが命取りになるからです。だから、飼い主さんが「いつもと同じ」と感じていても、体の中では病気が静かに進んでいることがあるんです。

そして、もう一つ大切なこと。犬や猫の1年は、人間の4〜7年分に相当すると言われています。1年に1回の健康診断は、人間に換算すれば数年に1度しか検査を受けていないことと同じです。できれば年1回、シニアになってきたら年2回の健康チェックをおすすめしています。


血液検査でわかること

健康診断の中心のひとつが、血液検査です。少量の採血で、体の中の多くのことを知ることができます。

CBC(血球計算)

赤血球・白血球・血小板を調べます。貧血の有無や、感染・炎症が体の中で起きていないかがわかります。

生化学検査

肝臓・腎臓・膵臓などの臓器の状態、血糖値、コレステロール、タンパク質など、全身の代謝に関わる項目を調べます。

気になる項目が出たときは、それだけで「病気だ」と決まるわけではありません。再検査や他の検査と組み合わせて、総合的に判断するようにしています。

「自分の子の正常値」を知っておくこと

血液検査で特に大切にしていることがあります。それは、若いうちから検査を続けて、その子自身の正常値を把握しておくことです。

検査結果には「基準値」が示されていますが、これはあくまでも多くの動物の平均的な範囲です。個体差があるため、その子にとっての「ふつう」が基準値の上限近くだったり、逆に下限近くだったりすることがあります。

若い頃から毎年検査をしておくと、「去年と比べてこの数値が下がってきている」という変化に気づけます。数値がまだ基準値の範囲内でも、経年的な変化の傾向は早期発見の大きなヒントになるんです。


でも、血液検査だけでは見えないものがある

ここからが、今日一番お伝えしたいことです。

診察をしていると、こういうケースに出会うことがあります。

「毎年血液検査を受けていたのに、がんが見つかった時にはかなり進行していた。」

飼い主さんは「毎年検査していたのに、なぜ?」と感じられると思います。でもこれは、血液検査が不十分だったわけではなく、血液検査には「見えにくいもの」があるからなんです。

人間の医療では腫瘍マーカーという血液検査で腫瘍の手がかりを探すことができますが、動物ではそのような検査がほとんどありません。そのため、以下のような病気は、血液検査では見つかりにくいことが多いです。

  • 脾臓の腫瘍(大きくなるまで血液検査は正常なことが多い)
  • 肺の腫瘍・転移
  • 膀胱の腫瘍・結石
  • 副腎・リンパ節の腫大
  • 関節炎・椎間板疾患
  • 皮膚・乳腺のできもの

これらの多くは、画像検査(レントゲン・超音波)や尿検査をして初めて見つかります。


画像検査がなぜ大切か

血液検査が「体内の化学的な状態」を見るものとすれば、画像検査は「臓器の形・大きさ・構造」を直接目で確認するものです。両方を組み合わせることで、はじめて体の全体像が見えてきます。

X線検査(レントゲン)

胸部と腹部を撮影することで、肺の状態、心臓の大きさ、腹腔内の臓器の配置などを確認できます。腫瘍の転移が肺にないか、骨や関節に異常がないかなども確認できます。

超音波検査(エコー)

レントゲンでは見えにくい臓器の内部構造を確認できます。肝臓・腎臓・脾臓・膀胱・リンパ節など、腫瘤(しこり)の有無や大きさ、血流の状態まで調べることができます。

特に脾臓の腫瘍は、犬では比較的多く見られる病気のひとつですが、かなり大きくなるまで症状が出ないことも多く、血液検査でも正常値を示すことがあります。エコーで定期的に確認することが、早期発見につながります。

尿検査

腎臓の機能低下は、血液検査の数値に反映される前に尿の状態に変化が現れることがあります。また、膀胱の炎症や結石、腫瘍の早期サインが尿から見つかることもあります。


健康診断は「組み合わせ」で力を発揮する

血液検査が大切ではないということではありません。血液検査は体の化学的な変化を見るうえで非常に重要で、臓器の機能評価、感染の有無、ホルモンの異常など、画像ではわからないことを教えてくれます。

大切なのは、血液検査と画像検査の両方を行うことです。

それぞれが見えるものが違うからこそ、組み合わせることで体全体の状態がはじめてわかります。どちらか一方だけでは、どうしても見落としが生まれてしまうんです。

当院では、フルの健康診断では血液検査に加えてレントゲン・エコー・尿検査をセットでおすすめしています。「全部やるのは大変そう」と感じる場合は、年齢やその子の状態に応じて何を優先するか一緒に相談しながら進められますので、気軽にご相談ください。


何歳から始めればいいの?

早ければ早いほど、「その子の基準値」が積み上がっていきます。若い頃から始めることで、比較するデータが蓄積されていきます。

目安としては以下のようにお伝えしています。

  • 1〜6歳(成犬・成猫):年1回の血液検査+尿検査。できればレントゲン・エコーも
  • 7歳以上(シニア期):年2回を推奨。血液検査+画像検査のフルセット

犬は7歳、猫は10歳ごろからシニアと呼ばれることが多いですが、大型犬はもう少し早い5〜6歳からシニアと考えるようにしています。


おわりに

健康診断の目的は、病気を「早く見つける」ことです。早く見つかればそれだけ選択肢が広がり、治療の負担も小さくなることが多い。

血液検査は大切です。でも、血液検査だけでは見えないものがある。だから画像検査も合わせて行う。それが、本当の意味での健康診断だと思っています。

「何歳から始めたらいいか」「うちの子には何の検査が向いているか」など、気になることがあればお気軽にご相談ください。一緒に、その子に合った健康管理を考えていきましょう。

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