FeLVとFIV感染症について(その2)

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
せっかくのゴールデンウィークですが、新型コロナウイルスの影響もあり、自粛続きで、
気持ちも沈みそうになりますね。でもこういうときだからこそ、できることもきっとあるはずです!
せっかく自粛して過ごすなら、暗く過ごすより、明るく楽しく自粛できる何かを探したいですね!!
ピンチはチャンスです。僕はこの機会に溜まった論文をたくさん読もうと思っています。

さて、前回の米国猫医学会(AAFP)ガイドラインの猫白血病ウイルス(FeLV)と
猫エイズウイルス(FIV)感染症(その1)に続いて、今日はその2です。
今回は「FeLV・FIVの検査とその解釈」についてです。元の論文はコチラです。

話題の新型コロナウイルスもそうですが、最も重要なことは感染した猫を見つけ、隔離することです。
それゆえAAFPは全ての猫において、以下のタイミングでのウイルス検査を推奨しています。
・初めて飼う時
・最初のFeLVやFIVワクチンを接種する前
・感染している可能性のある猫と接触したあと
・なにかしら感染を疑う症状がある時
です。


次にウイルス検査の結果の解釈(偽陽性や偽陰性の考え方)についてです。
・院内で行う検査の結果が陰性だった場合。
多くの場合、それは信頼できる検査結果ですが、偽陰性の可能性もゼロではありません。
FeLVの感染初期もしくはFIVの抗体が産生される前に検査した場合は陰性となります。
つまり、感染の可能性がある猫の場合、陰性と出ても、
そこからFeLVであれば30日、FIVであれば60日経って再検査が推奨されます。

・FeLVの検査方法について
実はウイルス検査といってもその検査方法はいくつかあります。
一般的にウイルス検査というと、院内で行うELISA検査のことをさしています。
それ以外にもIFA法やウエスタンブロット法、PCR法、プロウイルスを検出する方法などがあります。
それぞれの検査にそれぞれ利点・欠点があり、これらを組み合わせることにより、
検査結果の精度を高めることになりますが、その分費用もかかってきます。
どの検査が一番優れているということはなく、ケースバイケースでどの検査を行うかを考える必要があります。

・FIVの検査結果の解釈について
FIV感染症には3つの期間があり、感染急性期、無症候期、いわゆるエイズ期です。
急性期はまだ体の中で抗体ができていないことが多く、ELISA検査では検出できません(いわゆる偽陰性)。
またエイズ期末期には抗原抗体複合体が多く産生され、抗体量が減少するためELISA検査で検出できない場合があります。
もしエイズ期の症状があるにも関わらず、さらに感染リスクがあると考えられる猫で、ELISA検査で陰性となった場合は、
PCR検査やウエスタンブロット法などを用いて再検査することが望ましいです。

院内のELISA検査において母猫からの移行抗体の影響を受けるのはFIV検査です。FeLVは関係がありません。
もし移行抗体の影響を除きたいのであれば、ELISAではなく、プロウイルス検査などが有用になります。
つまり移行抗体の影響を考えると、生後6ヶ月齢以降に検査することが正確であると考えられます。
逆に言うと、6ヶ月齢未満でELISA検査でFIVが陽性と出ても、陰性である可能性はあり、
6ヶ月齢以上でFIVが陽性と出た場合は、生涯、陽性であるといえます。

さらにFIVワクチンを接種している猫においては検査系によっては陽性と出てしまうケースもあります。
解釈には注意が必要です。(FIVワクチン接種はアメリカやカナダでは2015年以降休止されている)

・院内で行う検査が陽性だった場合。
これらをふまえ、院内のELISA検査でFeLVやFIVが陽性と出た場合、
おそらく多くの症例でその検査結果は正しいといえます。
ですが、特に感染リスクもない猫や、もう一歩違う検査をしたいと考えた時、
以下の図のような考え方になります。(手書きですいません。しかも裏紙。。)


普段聞きなれない検査の名前や、陽性、偽陰性・・などとてもわかりにくい分野ですが、
猫たちにとっては重要なことです。各検査の特徴を理解し、ウイルスの病態を理解する必要があります。
「FeLVやFIVに感染している」というのは一生のことです。
正しい理解を深めていきたいです。次回もこの続きになります。もう少しお付き合いください。

当院にもっと緑を増やしたい!!と思い、「トネリコ」を迎え入れました!

まだまだ小さい苗ですが、きっとこれから大きく育ってくれることでしょう!
病院に入ってすぐの風除室内にいますので、成長を見守ってください!!

【原文はこちら】
2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines.

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