猫の扁平上皮癌|耳にできた難治性のただれ、癌かも知れません!
扁平上皮癌は猫の耳に出来る腫瘍の中で、肥満細胞腫という腫瘍に次いで2番目に多いとされています。
耳の傷やかさぶたが、実は扁平上皮癌だったということも少なくありません。
今回は猫の耳の扁平上皮癌について解説します。
最後まで読んでいただき、予防や早期発見・早期治療にお役立てください。
扁平上皮癌とは
扁平上皮癌は皮膚や粘膜に発生する悪性腫瘍で、遠くの臓器への転移は少ないと言われています。
しかしこの腫瘍は発生した場所で腫瘍が染み込むように広がり、骨をも容易に溶かしてしまう性質があります。
発症年齢は10〜12歳と中高齢で多く見られます。
特に下記の場所は多いとされています。
- 耳
- 口の中
- 鼻の上(鼻梁部)
原因は日光?白猫は要注意!
腫瘍の発生原因の1つに、紫外線が関係しているとされています。
皮膚、目、被毛には茶色や黒といった色をもたらすメラニン色素が存在します。
このメラニン色素は太陽の紫外線を遮断することが可能ですが、白い毛の部分はメラニン色素が少なく紫外線を十分に遮断できません。
そのため白猫は、耳を含めた皮膚の扁平上皮癌が多いと言われています。
また毛が薄く短い部分では紫外線が皮膚に届いてしまい、直接、皮膚の細胞を障害するため、耳や鼻の上が白い猫は白猫同様に注意が必要です。
気付きやすい初期症状
耳の扁平上皮癌で気付きやすい病変は
- 耳の縁が腫れている
- 治りが悪いかさぶた
- 耳のただれ
- 耳が折れ曲がる
などがあります。
腫瘍が進行すると耳の付け根にまで広がり、頭の筋肉や頭蓋骨を溶かすように進行していきます。
耳の近くのリンパ節にも転移する可能性があり、転移するとリンパ節の腫れが確認されます。
耳にできた扁平上皮癌の治療
猫の耳にできた扁平上皮癌の治療には外科治療、内科治療、放射線治療があります。
耳に発生した扁平上皮癌の生存期間中央値は3.8ヶ月と短いですが、外科治療で完全切除できた場合は根治が可能です。
そのため早期発見が大事と言えます。
外科治療
外科治療は
- 耳介の部分切除
- 耳介の全切除
があります。
部分切除は耳の縁に限局している場合に行います。
耳の付け根にまで広がっている場合は耳介の全切除や、この後解説する内科治療、放射線治療を耳介全切除と組み合わせます。
内科治療
内科治療は主に抗がん剤を使用します。
ただし抗がん剤の有効性は低く、治療効果が十分あるとは言えません。
そのため基本的には、外科治療で腫瘍が取りきれなかった場合や、主病変は手術で切除したが既にリンパ節への転移がある場合などに行われます。
使用される抗がん剤にはカルボプラチンがあります。
その他、抗がん剤ではないですがピロキシカムという薬剤も挙げられます。
近年では動物用の分子標的薬も登場し、その一つであるトセラニブの使用報告も増えています。
放射線治療
最近では放射線治療を実施している病院も増えてきました。
頭部の腫瘍は眼や脳などの重要な器官があり、手術が困難である場合も多いため放射線治療が選択されることも多くあります。
耳の扁平上皮癌も例外ではなく、治療の選択肢の一つとして考えられています。
耳の扁平上皮癌の放射線治療は、外科手術で腫瘍が取りきれなかった場合や手術の前に腫瘍を縮小させる目的で使用されます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
猫の扁平上皮癌には、その発生の原因に日光が指摘されています。
特に色の薄い猫ではその発生率が高いことから、長時間の日光浴などは避けていただき、直射日光の当たらないお部屋の環境作りをおすすめします。
耳の縁にある腫瘍であれば、外科手術をすることで腫瘍を完全摘出することが可能です。
ただし、そのためには早期の診断が必要と言えます。
当院は腫瘍診療に力を入れている動物病院です。
なかなか治らない猫の耳のかさぶたは、一度当院までご相談ください。
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