猫の乳腺癌の治療比較

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
先週は雪が結構降りましたね!
寒くてなかなか初動に時間がかかってしまいます。
根性が足りない証拠です。
2021年になりました。毎年、年の初めに目標を立てています。
大きな目標、小さな目標をそれぞれ立てて、それを一つずつ達成できるようがんばります。


僕のブログは論文の話をメインにしていることもあり、わかりにくい、難しいと言われます。
難しい内容を端的にわかりやすくまとめることができる、というのもその人の技量ですよね。
もっともっと精進します。

本日は昨年の10月にも書きましたが「猫の乳腺癌」についてです。
2020年11月にveterinary and comparative oncology に投稿された
「乳腺癌の猫137匹に対する術後ドキソルビシン vs メトロノーム化学療法+メロキシカム vs 手術単独」
についてです。

背景

猫の乳腺癌の治療のゴールドスタンダードは外科手術による片側乳腺全摘出術もしくは、両側乳腺全摘出術です。
そして、腫瘍のサイズ、リンパ節転移、組織学的悪性度、リンパ管内浸潤などが予後因子として挙げられます。
予後が悪いと考えられる場合などに術後化学療法などを選択することがあります。
しかしその臨床的な有用性はいまだ明らかとなっていません。

症例

今回、137匹の乳腺癌の猫に対して
グループ1(80匹):外科手術のみ
グループ2(34匹):外科手術+術後ドキソルビシンの投与
グループ3(23匹):外科手術+術後メトロノーム化学療法+メロキシカムの投与
に分けて、その無増悪期間(DFI)と生存期間(OS)を比較しました。

結果

その結果、
DFIはグループ1-3それぞれで、270日、226日、372日でした。(統計学的有意差なし)
OSはグループ1-3それぞれで、338日、421日、430日でした。(統計学的有意差なし)

数字だけ見ると、外科手術のみのグループ1がDFIでは一番成績が良いように見えたり、
グループ3がOSでは成績が良いように見えたりしますが、統計学的有意差はないですので、
どれが良い治療とは今回の研究では言えません。
グループ内を見ても例えばグループ1にはWHOステージが2の症例が10例いるのに対し、
グループ3には2例しかいなかったりと、母集団に偏りがあったりします。
グループ3のメトロノーム化学療法が比較的副作用も少なく許容された点は良い点だと思われます。
研究自体、retrospectiveであり、今後の前向き研究に期待されます。

簡単ですが、以上が論文の内容です。
やはりなかなか猫の乳腺癌でこの抗癌剤が良い!というデータはでてきません。
早期発見により早期の手術が現段階では良いと考えることもできます。
また早期の避妊手術も推奨されます!

今年も優しい目で、僕のブログも見守ってください。
本年もよろしくお願いいたします!!

原文はこちら→Adjuvant doxorubicin vs metronomic cyclophosphamide and meloxicam vs surgery alone for cats with mammary carcinomas: A retrospective study of 137 cases

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