FeLVとFIV感染症について(その3)

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言は解除されましたが、まだまだ油断しなようにしないといけません。
ついつい気が緩みがちですが、手洗い・うがい、基本ですね!
当院のトネリコは少しずつ成長しています。かわいすぎます。

今回も米国猫医学会(AAFP)ガイドラインの猫白血病ウイルス(FeLV)と猫エイズウイルス(FIV)感染症
についてのお話の続きです。そろそろ飽きてきた方もいらっしゃると思いますが、
とてもとても大切な分野ですので、もう少しお付き合いください。今日が最終回です。
その1その2もご参考にしてください。

最後は「レトロウイルス(FeLV/FIV)感染予防」についてです。
その1とかぶる部分もありますが、論文に沿って説明します。

[感染経路について]
FeLV感染は「仲良し」「社会性」といったグループ内で感染します。
主に唾液を介した感染になります。つまりグルーミングや食事、水などのシェア、看護などから感染します。
また若齢の猫が感染しやすく、重篤化しやすい傾向にあります。
一方で、FIV感染は「ケンカ」からが主です。母ネコからの感染は非常にまれとされています。

[ワクチンについて]
ある報告ではFeLVワクチンを接種したネコは接種していないネコに比べ、FeLV感染のリスクが7.5倍に上がるそうです。
しかし、ワクチンの効果を評価するのは非常に難しいと考えられており、決して万能ではないと考えておくべきです。
特にワクチンを接種していても、プロウイルスとしてDNAに組み込まれる可能性も十分あり得ると言われています。
万能ではないですが、効果がないわけではないということから、感染リスクのあるネコは接種が推奨されます。
また、初回の接種前には必ずFeLV検査を実施する必要があります。

2013年のAAFPワクチンガイドラインでは全ての子猫にFeLVワクチンの接種が推奨されています。
子猫は環境が変わりやすいので、どのような局面にも対応できるようにとの考えです。
8週齢以降に1回目、その後3-4週後に2回目の接種が推奨されています。その1年後に追加接種といった流れです。
論文上では接種部位は左後肢の指から膝関節の間に投与することが奨められています。

FIVワクチンに関しては、2013年のAAFPガイドラインでは
接種後のFIV抗体検査の解釈が困難になること、ワクチンでの防御効果が低いことをしっかり理解した上で、
接種するかを決めるように書かれています。ある研究では防御効果が56%とされています。

[その他、消毒などについて]
FeLVやFIVは通常の洗剤や、消毒剤ですぐに不活化します。
また、FeLVやFIVに感染しているからといって必ずしも隔離室に入れる必要はないです。
逆に、FeLVやFIV感染ネコは潜在的に免疫抑制状態にあると考えられており、上部気道感染症や
パルボウイルス感染症のネコの近くにはやらないといったことが言われています。
さらに、犬のボルデテラやパルボウイルスもネコに感染する可能性があるため、同じく、近くにはやらない
ようにする必要があります。
また輸血からの感染も考え、ドナーのFIV抗体検査やFeLVのプロウイルスのPCR検査が推奨されます。
FeLV抗原検査がたとえ陰性であっても、輸血を介してregeressive infectionの血が感染る可能性があるからです。

とても難しく、専門的な話で訳がわからなかったかもしれません。
正直、僕も解釈にとても時間がかかりました。
実際の論文はさらに続き、多頭飼育について、感染したネコの飼い方、そして治療法などが書かれています。
ですが、長くなってしまったので、この話はここまでにします。
もし興味がある方、ご質問のある方は気軽にお聞きください。
全3回、お付き合いありがとうございました!!

【原文はこちら】
2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines.

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