犬の炎症性乳癌に対する最新論文

みなさん、こんにちは。院長の諏訪です。
気づけばもう9月も半ばですね。
今年も残すところ3ヶ月余り。
毎日が早すぎます。
やりたいこと、目標としていることは
達成できているでしょうか?
今からでもきっと遅くはないでしょう!
遅くはないはず!!がんばろう。

犬の乳がんについて

本日は犬の炎症性乳癌に関する論文のお話です。
乳癌といえば猫のイメージが強いかもしれません。
猫の乳癌の話はこのブログでも何度か書きました。
猫の乳腺癌の治療比較
乳癌はお家でみつける病気!
当然、乳癌は犬でも発生します。
犬の乳腺腫瘍は昔から50%が悪性、50%が良性などと
言われてきましたが、近年では大型犬や小型犬などの
違いなどからそこまで悪性が多くないのでは?
とも考えられています。
ですが、犬の乳癌に遭遇することは珍しくありません。
比較的小さいできものでも乳癌と検査結果が返ってくることも
しばしばあります。

炎症性乳癌とは??

乳癌の中でも非常に悪い乳癌の一つに
「炎症性乳癌」と呼ばれるものがあります。
定義としてはややこしいですが、
「あたかも激しい炎症を伴っているように
 見える特殊な乳癌の臨床診断名」
とされています。
炎症性乳癌は非常に高い転移率を示します。
さらにこれまでの研究から、抗癌剤が著効する可能性は低く、
ステロイドや非ステロイド剤などの治療を用いた場合の
炎症性乳癌の予後はおよそ1ヶ月前後といわれています。
極悪な癌の一つです。

最新論文の紹介

その炎症性乳癌の治療に関する報告は毎年あり、
全てを鵜呑みにはできませんが、
今回、2021年8月に最新の論文が投稿されたため、
この報告を簡単にざっくり、ご紹介したいと思います。

前述のように、炎症性乳癌の治療法は確立していません。
この報告では
・経口のCOX2阻害薬+トセラニブを併用した群(MT群)
・経口のCOX2阻害薬単剤の群(ST群)
において、これらの治療法の有効性を比較しました。

16匹の炎症性乳癌の犬が対象となり、
MT群が8例、ST群が8例でした。
結果、生存期間中央値は
MT群で96日、ST群で37.5日とMT群で有意に高いものでした。
それ以外にも無病生存期間(DFS)、増悪までの期間(TTP)など、
全てにおいてMT群が有意に高い結果となりました。
一方で、副作用もMT群の方がST群よりも多いという結果でした。
これらの副作用は支持療法で対応できるものでした。

過去の報告から考えても今回の報告のMT群は
治療が効果を示しているように感じます。
残された時間が30日から90日に延びるかもしれない。
これをたったの60日と捉えるか、貴重な60日と捉えるかは
考え方は様々だと思います。
もちろん全ての症例にあてはめることはできませんが、
治療の選択肢の一つとして、考えられるのではないかと思いました。

原文はコチラ→Clinical outcome of dogs diagnosed with canine inflammatory mammary cancer treated with metronomic cyclophosphamide, a cyclooxygenase-2 inhibitor and toceranib phosphate

さいごに

10月は臨時休診などが数日ある予定です。
御来院の前には、ホームページのお知らせや、
LINEをチェックしてください。
ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解のほど
よろしくお願いいたします。

(写真はガチャガチャのミヤマクワガタです。
最近のガチャガチャのクオリティの高さに驚きました。)

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